人が見ないようにしている「事実」を見せてくれる監督ですね。
「家族が一番」という思いは、現実によって立ちいかなくなっていることを見せてくれるのです。
この映画を世界が評価しました。
ということは、日本だけではなく世界中で、家族が立ちいかなくなっていることかもしれません。
私たちはそのことにうすうす気が付きながらも、認めたくないと無意識に思っていたのでしょう。
私は非常に優れた作品だと思いました。
しかし、アマゾンビデオのコメント欄には、
☆5つのコメントとともに、☆1つのコメントがびっくりするほど多く書き込まれています。
「監督の想像の産物」、「なぜ日本の恥を世界に晒すのか」といったコメントです。
普通、映画評にはこのようなコメントは出てきません。
映画が好きな人はこのような書き方はしないのですね。
是枝監督を否定したい人々がこの日本に多くいて、映画を創ってもらいたくないと思っているのでしょう。
そうは問屋が卸しませんね。
「日本の伝統と美風というみんなの幻想」は、現実を「見える」ようにすれば、陽炎のようなものだとわかるし、
その陽炎に支えられた現実社会の危うさも見えてきます。
施政者が考えている「家族制度」は現実のものではないのは明らかです。
世界の流れの周回遅れで、固い法制度の壁が少しづつ崩れています。
夫婦別姓、同性婚などもその一角です。
いわゆる「事実」を認めることで、過去のものになった「家族制度」がなし崩れていっています。
それを、どうしても認めたくない人々が、この映画のコメント欄に☆1を書き込んでいるのでしょう。
『万引き家族』は、都会の片隅でひっそりと暮らす6人家族の話です。
家族と言っても、血のつながった家族ではありません。
他に住む場所を失くした人々が寄り添って暮らしているのです。
6人が食べていくには相応のお金が必要です。
ところが、この家族はあろうことか、だんだんと人数が増えてきた家族です。
見て見ぬ振りができなかったために家族に受け入れて増えてきたのです。
翔太は車上に置き去りにされた少年。
ゆりは、家族からネグレクトされた少女(幼児)。
両親役を担っている、治(リリー・フランキー)信代(安藤サクラ)を中心に、
祖母役の初枝(樹木希林)
信代の妹役の亜紀(松岡茉優)
それぞれが失われた家族の役割を演じます。
しかし、生きていくためには、食べていかなくてはならない現実があります。
その上、治と信代は失職します。
いよいよ収入源は、祖母の年金と「万引き」しかなくなりました。
そして、祖母の死。
治と信代は、祖母の死を隠し、年金を受け取り始めます...
さてこの家族はどうなっていくのでしょう。
これを魅せるのが監督の手腕ですね。
お読みいただきありがとうございました。