岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

【里預け】今でも試行錯誤中   石井十次30

2005-03-21 12:42:21 | 石井十次
「里預け」は、今でいう里親制度である。この言葉は、
よく聞く。
では、現在、制度として機能しているのか。
平成15年現在、全国で2,811名が里親制度を利用している。
諸外国に比べてとても少ない。児童養護施設は28,988名が
入所しているのだがその1割にも満たない人数である。
今だ試行錯誤中といってよい※1。

ただし十次の里預けは戦後の里親事業との連続性はない※2。
では、十次は何人を里預けに出していたか。
なんと一番多いときは、216名である。明治期の一施設が、
今の児童受難時代に比較して1割に近い里預けをしていた
のである。これは、当時孤児院が手狭になったという理由が
あるのだか、十次が里預けという仕組みを重要だと考えていた
ことの証しでもある。

十次の里預け制度とは?

バーナード方式による里親委託事業を参考にしていると
言われている。
山室軍平は1905年4月に渡英しているが、そこでバーナード
ホームの報告書の入手している。帰国した軍平はバーナード
方式による里親委託について、十次に報告することになる。

バーナードは1870年、バーナードホームを創設して、
10歳以下の児童をクリチャンホーム(キリスト教徒の家庭)へ
里親委託し10歳になれば、施設に引きとり、職業教育をした、
という。

十次は入院対象を学齢児童に限定していた、にもかかわらず、
乳幼児の受け入れを決断した。その養育方法が里預けに求めた
のである。

十次は定員を100人とした。巡回指導者の設置。地域の限定など
なるほどと思うことが多い。
内容を少し詳しく引用すると、
「施設長たる十次と里親との間で養育委託に関する契約書を
取り交わし、施設主導の里親委託であることを明確にしている。
施設内においた専任の巡回指導員が定期的に地域を訪問し、
里子の体重を測定し、養育委託費月4円を支払う。そして里子が
一定年齢に達すれば施設で引き取った」※2

これは日本国内では他施設や制度に取り入れられることはな
かった。十次の事業が有する国際性と開放性と比べると、
閉鎖的で内向きになりがちな施設と政策をめぐる日本的体質は、
それを受け入れる器とはなりえなかったのであろう。

※1 坂本洋子さんが「ぶどうの木」10人の”わが子”と
すごした、里親18年の記録という本を幻冬舎から出版
されている。現在の里親の貴重な記録だと思います。
※2「岡山孤児院のおける里親制度の特徴について」細井勇さん

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