ここのところ、北海道新聞の夕刊に『私のなかの歴史』というコーナーで、動物学者の門埼允昭(かどさきまさあき)さんによるヒグマ研究の聞き取り記事が掲載されています。
今日の夕刊はその5回目で、タイトルは「襲われたら『死んだふり』より応戦」というもの。
門埼さんは動物学者としてヒグマをもう45年も研究していて様々なヒグマの生態を調査してきました。
そしてその結果として人に対するヒグマの行動を以下の9種類に分類しているのだそう。
それは、
①人と遭遇しないよう、注意しながら行動する
②人が来たら、身を潜めるか移動する
③人と遭遇したら、すぐに身を翻しはなれていく
④その場でしばらく人の様子をうかがう。立ち上がることもある。
⑤少し近づいてくることもある。人の様子をうかがい、なかなか離れていかないこともある。
⑥前記の⑤で、その後瞬時に身を翻し去る場合と、ゆっくり離れていく場合がある。
⑦脅しに、瞬時に人に突進して人の数メートル前で止まり、一瞬ほえるなどする。また、瞬時に後退し、やおら歩いて去ることがある。
⑧熊の以前からの生活地で、今も周囲に草木があり、しかも人が危害を加えないと分かれば、平気でその場にいて離れようとしないことがある。
⑨まれに人を襲う。瞬時に襲いかかかるのと、にじり寄る場合とがある。
という9項目です。なんだかドキドキしますね。
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さて、これらに対して人間はどう対応したらよいでしょうか。
門埼さんは、「距離が30メートルあれば、まずは安心で、不意の出会いを避けるため早く人がいることに気づいてもらうのが肝心。見通しの悪い道では『ホッ、ホッ』と声を上げましょう」と言います。
④、⑤、⑧などは、しばしばマスコミで「人を恐れぬ新世代グマ」と言われますが、それは誤解で、昔からあるヒグマの振る舞いの一つなんだそう。
そして、実際にクマが⑦のような行動に出たら、走って逃げるなどの大きな動作は禁物。ゆっくり後ずさりするのは良いとしても、もうそうなったら気を強く持ってナタを構え戦う覚悟を決めろ、と言います。
⑨の場合も「死んだふり」は有効ではないと言います。死んだふりをしてかじられた事例はいくつもあり、またかじられたことで観念して起き直り、ナタをクマの顔面にたたきつけると熊は逃げた、という事例もあるそう。
なるほど、危機に陥った際に自ら努力をせず危機が去ってくれることを祈るよりも、自らの力で危機を追い払う自助努力をせよ、という教えと読み取りました。
今まで釣りに行くのでも、重いナタを下げてゆくのは嫌っていたのですが、最後に頼りになるのは手近な武器としてのナタだ、というこの記事を読んでナタを下げてゆくことにしようと思います。
北海道のアウトドアは、フィールドをクマとシェアしているのだと思いましょう。