北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

「人口減少の未来学」を読む

2019-08-09 21:17:11 | Weblog

 

 「人口減少社会の未来学」(内田樹 編 文芸春秋刊)を読みました。

 所属している都市計画学会でも話題にしていますが、今の日本社会の喫緊の課題は人口減少だと思うので、それに関する様々な本や言論に触れようとしています。

 この本は、フランス文学者にして体制にはアンチ的な立場を取り続けている内田樹(うちだ・たつる)氏が、文芸春秋社からの「人口減少社会の未来について、いろいろな視点からの知見をまとめた本をつくりたい」という要請に応じて、各方面の論客に寄稿依頼を行って編纂した本。

 寄稿した方は、池田清彦(生物学者)、井上智洋(経済学者)、小田島隆(コラムニスト)、姜尚中(政治学者)、隈研吾(建築家)、高橋博之(「東北食べる通信」編集長)、平川克美(文筆家)、平田オリザ(劇作家・演出家)、ブレイディみかこ(コラムニスト)、藻谷浩介(地域エコノミスト)というメンバーで、なかなかの論客たち。

 そこで編者たる内田氏の問題意識は、

・これからの急激な人口減少では、市場が縮減し多くのビジネスモデルは
 退場せざるを得ない。
・それは国民生活の激変をもたらすはずだが、人口減少によって何が起き
 るかということについて、科学的予測を踏まえた「国のかたち」につい
 ての国民的な議論はまだ始まっていない。
・これは正解を知っている者はいない、誰も解を知らない問題だ。
・ただ「難問に対して衆知を集めて対話する」という作法を提示したい。
・この論集も、誰が正しくて誰が合理的なのかはわからないが、それぞれ
 の知見と提言を突き合わせることで、より蓋然性の高い仮説ができるの
 ではないだろうか。

 …といったこと。

 内田氏は、「日本人の国民性は、最悪に備えて準備しておくことが嫌いという『病』であるように思える」と評して、いまだに本気にならない日本社会に警鐘を鳴らしています。

 そのうえで、「これから我々が行うことは『撤退戦』である。撤退戦であるからにはその目標は『勝つこと』ではなく、『いかに被害を最小限に食い止めるか』ということだ」と言います。

 そういう編者の考えを踏まえて、各人の論考が始まります。


      ◆


 個別の論考を評するだけの紙幅はありませんが、「やっぱり富を皆で分け合うような、ベーシックインカムになるなじゃなかろうか」という方がいれば、「待て待て、思い込みを排して、冷静に数字をにらんでみろ。いろいろな真実が見えてくる」という方。

「少子化の原因は社会的規範の変化の結果で、それは大家族制から核家族化が進み有縁社会が無縁社会を目指していることの結果だ。それはもう戻れないので、解決法は婚外子を認めて、子供を社会全体で育てる社会の実現しかない」という方。

「ヨーロッパを見ていると、縮退する社会はやっぱり夢がなくていやだ。『もう発展を望むな』などという若者に夢のない言葉を吐いて気持ちを縮めてしまうような言説は百害あって一利なし」

「子育て中のお母さんの関心ごとは、子育て支援と、教育水準と医療、そして居場所(文化)だ。このことに気が付いた自治体と気が付かずに企業誘致に明け暮れている自治体では大きな差が開きつつあるぞ」

 それぞれの論考は実際に読んでみてほしいけれど、最後の関心ごとは、それらの評論を踏まえて、さて自分はどう生きたらよいのか、ということになるのでしょう。

 自分自身の残り少ない人生に対する生き方、子供や身内だけは守ってあげたいという範囲の拡大、さらには地域社会、我が国のこれからの時代を支える若者世代への貢献はどうあるべきか。

 少なくとも、自分だけが逃げおおせようという生き方よりは、少しでも社会に貢献する生き方をする人が増えることが求められます。

 まさに二宮尊徳の報徳の教えにある「至誠、勤労、分度、推譲」のうち、他に、地域に、のちの世代に『譲る』という推譲の精神を社会のなかで当たり前にしなくてはいけないような気がします。

 まだ遅くありません。

 解決方法の一つは、報徳の教えを学び、実践することのように思えます。 

 

コメント
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