都市計画学会の友人と、「地方都市のまちなかって、もう商店街はシャッター街になって機能していないだろうし、どうやってその空き家や空き商店を使えるようなまちづくりができるんだろうか」と話していて、「まずはそういうリノベーションをやったことのある方の話を聞こう」ということになりました。
そこで先日、道東のA町でまちなかの空き家を改築して新しい機能を付け加えるような「まちなかリノベーション」をやったことがある、という建築家の方を訪ねました。
その方によると、A町では役場の精鋭が集まってまちなかをなんとかしようと、もうほとんど機能していない商店街のリノベーションプランを策定して、国の地方創生関連交付金を得ることができたのだそう。
その資金をもって、建築家集団の力を借りて、その一方で地域で何かやりたいと思っている地元の若者たちと一緒に商店街を見て回り「ここは使える」という建物にアタリをつけてリノベーションプランを策定。
なかには「もう壊して一から建てた方が早いだろう」と思うような建物もあったけれど、建て替えの作業では地元を面白がる若者集団と一緒になって作業をしたことに意味があったと言います。
地域の将来性について私から「しかしそういう元商店街ではどんな機能が成立するでしょうか?」と訊いてみると、「確かにもう新しい商店は成り立たないでしょう。人口が3~4千人くらいのA町では、せいぜいゲストハウスとコワーキングスペースくらいでしょう」
"コワーキングスペース"とは、事務所になったり会議室になったりといろいろな空間を共有しながら、一人一人は独立した仕事をするような、共働のオフィス的空間のこと。
「コワーキングスペースやゲストハウスと言いますが、『じゃあ私がやる』というような人材はその町にいましたか?」
「ええ、プランニングの段階で『こうしたらいいね』と言っているうちに、話に加わっているような方が、『じゃあ俺がやる』という話になっていきましたね」
「しかしゲストハウスやコワーキングスペースでちゃんと稼いで食べていけるというようなビジネス規模になりますか?」
「そこは難しいかもしれません。しかし実際には農業をちゃんとやっている方が『ゲストハウスをやってみたい』とおっしゃったり、地元でいろいろなところからの仕事をもうもらってやっていけているような方が、『おれがそのコワーキングスペースに入る』と言ってくれたりしています。誰がやるのかが決まらないことを恐れてなにもしないよりは、まあやってみれば何とかなる、というところもあるのではないでしょうか。そもそも何もしなければ衰退する一方ですからね」
「確かにそうですね。ではゲストハウスやコワーキングをすることで町が賑やかになって拡大再生産の道まで行くでしょうか」
「それもまた難しいと思います。しかし、黙っていれば町の人口が20年で半分になる、というような予想を、関係人口を増やしたりそこでの出会いをビジネスに繋げたり、それが縁で出て行った人が戻ってくるとか、20年を30年でとか35年に伸ばすようなボクシングの『クリンチ』のような意味合いはあると思います」
「なるほど」
「それに、それが町の将来を救うというような大仰な役割を期待されるというよりは、何にもない場所で何か愉快なことをしたいという思いは強いです。それをするところがなかったのが、これでそれができると思えば、日常の暮らしが明るくワクワクしてくるという効果があって、そちらの方が大きいのかなあ」
人口の少ない地方都市では、一発逆転のホームラン狙いの大きな事業に挑戦するよりも、ゲストハウスで一宿一飯の縁ができた人を増やすとか、コワーキングスペースを情報発信の場所にするなどの地道な活動が現実的です。
そこで何かを作るということもできたものが良いかどうか、ということもありますが、それを皆でやることの方に大きな意味を感じているということもありそうです。
もう少しいろいろな町の、まちなかリノベーション、空き家リノベーションへの挑戦の姿を見てみたい、そんな気持ちが沸き上がりました。
もっと地方を訪れてみないといけませんね。