先日、来年の4月から始まる高校の新教科「地理総合」の準備に関するリモート会議に参加して、高校の先生たちと意見を交わしました。
地理総合は、来年四月から全ての高校で必修になる科目で、20年ぶりに地理が必修になったことは教育界で話題になりました。
その背景には、自分たちが住んでいるまちのことを知らず、あるいは地域の社会や防災などについてしっかりと学ぶ機会がないままでは、災害や社会の課題に立ち向かって力強く暮らしていける社会人が育たないのではないか、という危機感があるのでしょう。
今度の地理総合では、大項目がA、B、Cとあり、AではGISを含む地図情報の見方を学び、Bでは日本と世界のつながりを学び、Cでは防災と地域課題への関わりを学びます。
高校の地理の先生たちにアンケートを取ったところ、やはり大項目Cのうち、特に地域での課題設定や解決策を構想するといったあたりに、どのような指導をすればよいかに不安や悩みの声が多く聞かれました。
私の所属する都市計画学会では、そもそもそうした地域課題を調査したり解決の方向性を研究しており、そうした先生たちの悩み解決のお手伝いができないか、という思いからモデル授業例を作ってみて応援しようという取り組みを行っています。
そんな関係で高校の先生たちの意見交換会にも読んでもらい、現場の情報を提供してもらったのでした。
アンケート結果で面白かったのは、C-2と呼ばれる項目で、地域課題を見つけて調査して解決の提案をするというところで、地域の課題として、「観光」「地域振興」「農林水産業」などを掲げた声が思った以上に大きかったことです。
やはりそれが今の地域の課題感を適切に表していると思います。
また、「正直言って高校のレベルが高くはないところで生徒に興味と関心を持ってもらえるような授業の入り方」や「生徒に地域を見て回らせることの難しさ」に不安の声が聞かれました。
特に地域を見て回る「巡検」という取り組みは、北海道の場合この課題を行うのが冬の間になってしまいます。
そのため、冬期に生徒たちを外回りさせることは極めて難しいと思っている先生が多く、実際に地域を出歩かずに調査や確認ができる方法はないだろうか、ということが大きな課題として浮かび上がってきました。
実際に地域を見て回ることができれば、興味や関心を大きく引き寄せられることに繋がることが強く期待されますが、そういうことをせずに地域理解を深めたり、興味関心を強く持ってもらうのにはどうしたら良いでしょう。
「そこが一人ひとりの先生の腕の見せ所です」と言ってしまえばそれまでですが、「社会の中の一員」として社会を支える大人になるための準備です。
未来の課題を解決するのは若い人たちの力です。
より良い人材育成のために、年寄りも大いに協力すべきポイントです。