ある友人と話をしていて、「目利き」の話になりました。
目利きというのは、あるものを数多く一心に見つめるところから、微細な違いや変化が分かるようになるということ。
それは一つの能力なので、分かる人には分かることが、分からない人にはどうしても分からない、ということが起きます。
分からない人から見ると、まるで超能力のように見えますが、分かる人にとってはあくまでも訓練の成果なので、何の不思議もありません。
かつて転勤で信州安曇野に暮らした時に、「蝶々一筋60年」という方に会いました。
ある人はこの方を評して、「飛ぶ蝶の影を見ただけでなんという蝶か分かる人ですよ」と言いました。
「そんなことがあるのですか!?」と驚いたものですが、よくよくご本人から話を聞くと、とにかく幼い時から野山を駆け巡って蝶を採取してきて、その結果を、いつ、どこでどんな環境のところでどんな蝶が取れたか、をずっと記録してきたのだそう。
そうしたノートが何十冊にもなっていて、そうした経験が積み重なると、この季節に、この環境のところで、こんな飛び方をするこれくらいの大きさの長はあれだ、ということが分かってくるということがうなづけたのでした。
ことほどさように、一つのことをじっくりと見つめることで微妙な違いが分かってくるものです。
私は良く「眼力」という単語を使いますが、全く同じ意味のこと。
こういう能力が身に着くと、人生が楽しくなってくることでしょう
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ところがこと組織の中での仕事となると、また様相が変わります。
優れた一人がいて、なんでもこなせて頼られるのは良いとして、その人が転勤などでいなくなった時にそれほど優秀ではない人が後任になると、とたんにチームのパフォーマンスが落ちる、ということにもなりかねません。
組織での仕事としては、引き継ぎ書やマニュアル、手引きなどを作って、やり方をスムースに引き継ぐことが必要です。
またできれば組織全体が、どこへ行っても同じソフトや同じ様式で仕事をしていて、混乱しないというような備えをしておくことも大切でしょう。
その人しか使えないような職人技のソフトでは、次に生かせないこともしばしば起きるのです。
そんなわけで、個人としては目利きになるような生き方を目指しつつ、組織の中では全体のパフォーマンスが上がるようなシステムを作るというこのバランスが大切だということ。
これを間違えると、組織の中で浮いてしまったりする憂き目を見るかもしれません。
自分自身の中にもあるべきこういうバランス感覚。
自分自身をちょっと俯瞰してみる視点も持った方が良いですね。