ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表が優勝して、もう日本中が熱狂している状態だ。僕は別に「熱狂」はしてないけど、この間の2週間はずっと見ていた。大いに楽しんだし、感動もした。やはり今年の大ニュースになるだろうから、そのことを簡単にまとめてみたい。僕は基本的にスポーツ中継は(テレビで)よく見ているが、それは面白いからだ。今回の準決勝、決勝を見れば誰でも判るだろうが、どんな「物語」にもましてドラマチックな一瞬一瞬がそこにはあった。
今回のWBCは何と言っても「大谷翔平」のためにあった。「獅子奮迅」「前人未踏」「空前絶後」「八面六臂」「前代未聞」「粉骨砕身」「初志貫徹」「勇往邁進」「完全無欠」「天真爛漫」…。四字熟語が幾つでも浮かんでくる大活躍。日本からアメリカに行き、さらに大きくなって帰って来た。5年ぶりに日本で見られる5試合。皆が大谷に魅せられた2週間だったと思う。
(準決勝で9回に二塁打を打った)
特に準決勝で一点負けていた9回、自分が二塁打を打ったときの雄叫びのような姿。このヒリヒリした瞬間を自らの手で作り出す。単に才能とか努力とかで語りきれない強運である。やっぱり凄いな。そして決勝戦の9回に登板した。僕はそれは予想していた。かつての日本シリーズと同じである。出られる状態なら、本人も出たいと思うだろう。しかし、トップバッターに四球を与えてしまう。それが併殺で2アウトになって、最後の打者はマイク・トラウトだった。もうこの話の結果は誰でも知ってるから書かない。MVP3回受賞、昨年も40ホームランの打者だ。大谷が打たれて同点になったら、もう仕方なかったと誰もが思うしかない場面だ。
(トラウトが三振して終了)
一次リーグから、もうドラマ全開だった。最初の中国戦で、ヌートバーが初球を打ってヒットを放った。3月11日にはチェコ戦に佐々木朗希が先発した。12日のオーストラリア戦では1回に大谷がついに大ホームランを放ったが、それは何と自分の顔が大きく写った大看板に当たった。何でそうなるんだろうというドラマがいっぱいあった。だけど、一次リーグを1位突破するのは、大体予想していた通り。それだけなら、ドイツとスペインに勝って一次リーグを突破した2022年サッカー・ワールドカップ日本代表の方が凄いだろう。
(大谷がホームラン)
僕はここまで「侍ジャパン」と書いていない。「侍」は嫌いだから。侍がカッコいいというイメージは近代に作られたものだろう。それに内外多事多難の中、各局のテレビニュースはほとんどWBCばかり。「ジャパン」を強調するのも嫌だ。「日の丸を背負って」なんて表現もどうかと思う。「国家」は暴力を独占していて、時には「悪」をなす組織だと思っている。それは「冤罪」問題一つとっても判る。今回は1次リーグとトーナメントの間に、袴田事件の再審開始決定と検察の特別抗告断念があった。まさにここに「国家悪」がある。僕はそっちの方が大事で、もし再審開始じゃなかったら準決勝、決勝を楽しめなかったと思う。
そうなんだけど、だから「国家を讃える」「国民の目を政治からそらす」スポーツショーは警戒して一切見ないなどというのは、極端過ぎる。大体そんなこと言ってては会話が成り立たないような生徒もいっぱい見てきた。プロスポーツの話題で一緒に盛り上がれるタイプの生徒もいるじゃないか。ウルトラ・ナショナリズムを警戒するあまり、穏健なナショナリズムまで「敵」にしてはいけない。そうじゃないと、国民の中で浮き上がる存在になってしまうだろう。
ところで大谷やダルビッシュも凄いけど、今回の勝因は明らかに素晴らしい「中継ぎ投手」だ。球数制限もある中、二番手、三番手の投手が試合を左右した。決勝戦だけ見ても、7人の投手が出て来た。そして打たれたヒットは9本、与えた四球は4つだった。アメリカは結構出塁しているのである。だが、点に結びついたのはソロホームランの2本だけだった。アメリカ投手が打たれたヒットは5本で、日本の方がずっと打たれていた。だが四球も8つで、合計すれば日米の出塁数は大差ないことになる。一瞬の気も抜けない中で、戸郷翔征、高橋宏斗、伊藤大海、大勢という若い投手陣がよく無失点で切り抜けたもんだ。キューバ戦で14点取った打線を相手にしているのである。ここで大量得点されたら終わりだった。
(準決勝で村上がサヨナラ打を打つ)
そして思ったのは、1次リーグで不振だった村上宗隆をよく使い続けた。1次リーグは大谷、ダルビッシュ、吉田正尚の大リーグ勢に加え、佐々木、山本、近藤などパリーグ関係選手の活躍が目立った。でもセリーグ出身者も活躍しなければ、優勝は出来ないと思っていた。それが準々決勝で岡本が5打点、準決勝で村上が逆転サヨナラ打、そして決勝では村上、岡本がホームランである。よくぞ栗山監督は村上を信じて使い続けた。この「信じる力」こそ、今回一番印象的で感動的なことだった。
今回のWBCは何と言っても「大谷翔平」のためにあった。「獅子奮迅」「前人未踏」「空前絶後」「八面六臂」「前代未聞」「粉骨砕身」「初志貫徹」「勇往邁進」「完全無欠」「天真爛漫」…。四字熟語が幾つでも浮かんでくる大活躍。日本からアメリカに行き、さらに大きくなって帰って来た。5年ぶりに日本で見られる5試合。皆が大谷に魅せられた2週間だったと思う。

特に準決勝で一点負けていた9回、自分が二塁打を打ったときの雄叫びのような姿。このヒリヒリした瞬間を自らの手で作り出す。単に才能とか努力とかで語りきれない強運である。やっぱり凄いな。そして決勝戦の9回に登板した。僕はそれは予想していた。かつての日本シリーズと同じである。出られる状態なら、本人も出たいと思うだろう。しかし、トップバッターに四球を与えてしまう。それが併殺で2アウトになって、最後の打者はマイク・トラウトだった。もうこの話の結果は誰でも知ってるから書かない。MVP3回受賞、昨年も40ホームランの打者だ。大谷が打たれて同点になったら、もう仕方なかったと誰もが思うしかない場面だ。

一次リーグから、もうドラマ全開だった。最初の中国戦で、ヌートバーが初球を打ってヒットを放った。3月11日にはチェコ戦に佐々木朗希が先発した。12日のオーストラリア戦では1回に大谷がついに大ホームランを放ったが、それは何と自分の顔が大きく写った大看板に当たった。何でそうなるんだろうというドラマがいっぱいあった。だけど、一次リーグを1位突破するのは、大体予想していた通り。それだけなら、ドイツとスペインに勝って一次リーグを突破した2022年サッカー・ワールドカップ日本代表の方が凄いだろう。

僕はここまで「侍ジャパン」と書いていない。「侍」は嫌いだから。侍がカッコいいというイメージは近代に作られたものだろう。それに内外多事多難の中、各局のテレビニュースはほとんどWBCばかり。「ジャパン」を強調するのも嫌だ。「日の丸を背負って」なんて表現もどうかと思う。「国家」は暴力を独占していて、時には「悪」をなす組織だと思っている。それは「冤罪」問題一つとっても判る。今回は1次リーグとトーナメントの間に、袴田事件の再審開始決定と検察の特別抗告断念があった。まさにここに「国家悪」がある。僕はそっちの方が大事で、もし再審開始じゃなかったら準決勝、決勝を楽しめなかったと思う。
そうなんだけど、だから「国家を讃える」「国民の目を政治からそらす」スポーツショーは警戒して一切見ないなどというのは、極端過ぎる。大体そんなこと言ってては会話が成り立たないような生徒もいっぱい見てきた。プロスポーツの話題で一緒に盛り上がれるタイプの生徒もいるじゃないか。ウルトラ・ナショナリズムを警戒するあまり、穏健なナショナリズムまで「敵」にしてはいけない。そうじゃないと、国民の中で浮き上がる存在になってしまうだろう。
ところで大谷やダルビッシュも凄いけど、今回の勝因は明らかに素晴らしい「中継ぎ投手」だ。球数制限もある中、二番手、三番手の投手が試合を左右した。決勝戦だけ見ても、7人の投手が出て来た。そして打たれたヒットは9本、与えた四球は4つだった。アメリカは結構出塁しているのである。だが、点に結びついたのはソロホームランの2本だけだった。アメリカ投手が打たれたヒットは5本で、日本の方がずっと打たれていた。だが四球も8つで、合計すれば日米の出塁数は大差ないことになる。一瞬の気も抜けない中で、戸郷翔征、高橋宏斗、伊藤大海、大勢という若い投手陣がよく無失点で切り抜けたもんだ。キューバ戦で14点取った打線を相手にしているのである。ここで大量得点されたら終わりだった。

そして思ったのは、1次リーグで不振だった村上宗隆をよく使い続けた。1次リーグは大谷、ダルビッシュ、吉田正尚の大リーグ勢に加え、佐々木、山本、近藤などパリーグ関係選手の活躍が目立った。でもセリーグ出身者も活躍しなければ、優勝は出来ないと思っていた。それが準々決勝で岡本が5打点、準決勝で村上が逆転サヨナラ打、そして決勝では村上、岡本がホームランである。よくぞ栗山監督は村上を信じて使い続けた。この「信じる力」こそ、今回一番印象的で感動的なことだった。