星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
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月の独奏… : 『ラフォルグ抄』

2019-02-14 | 文学にまつわるあれこれ(詩人の海)
私は乗合馬車の屋上で
仰けに空を眺めて煙草を吸っている。
……

、、ジュール・ラフォルグの「最後の詩」(Derniers Vers) と題された連作の中から、「Ⅶ 月の独奏」の冒頭です… (『ラフォルグ抄』吉田健一訳 講談社文芸文庫 から。 昨年12月に出たばかりの、 冒頭にはこの連作詩が載っていますが、 この本はラフォルグの短篇小説を集めたもの。 詩人ラフォルグの小説を読んでみたくて手にしました、、 でもまだ開いたばかりなんです… 目についた詩をちょっと…)


、、乗合馬車について、 前回「冬の旅」のところで書いたのは ラフォルグよりも半世紀ほど昔の郵便馬車でしたが、 ラフォルグの詩にも《角笛》や《森》や《馬車》が出てきたので なんとなくつながりを感じて…。 こんなふうに旅人が、過ぎし日の女に想いを馳せるあたりなども…


 今あの女はどこにいるだろう。…


「月の独奏」… 長い詩です。 ところどころ…

 月が昇る。
 街道は夢のようで
 どこまでも続き、
 駅があって馬を換え、
 馬車に明りを付け、…

 ***


 …
 もしこの同じ時間に
 あの女がやはり森にその不幸を
 月光に沈めに…

 ・・・
 きっと襟巻を持って出るのを忘れて、
 こんな晩だから、戻る気になれなくて体を壊すに違いない。
 ああ、体に注意してくれ。
 私はあの咳が聞きたくない。…


、、ラフォルグ自身 結核で27歳で亡くなっています、、 咳、が意味するものはあの当時 《別れ》を意味するものでもあったのでしょう…

、、悲しい詩かもしれませんけれど、 ラフォルグが「体に気を付けてくれ」 と、前の方でも繰り返していて、、 その言葉に胸を打たれます… 愛している、でもなく、 忘れられない、でもなく、、
 「体に気を付けて…」


その一方で、、 旅をつづける詩人は 「どの位私は放蕩に耽ることだろう」とも…… 笑

 ***




… きょうは「冬の旅」のつづきを書くつもりでしたが、 ちょっと体調おもわしくなく、、さきほどまでお薬のんで眠っていました…

それで今、、 なにかフォトでも挙げようとラフォルグを開いたら、 詩人が乗合馬車の上で月を見上げながら、 「体に気を付けて…」と呟いてくださったので、、


ありがとう… と。


貴方もね… 

 

Happy Valentine's Day...