prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「堕天使のパスポート」

2004年09月02日 | 映画
ロンドンを舞台にしながら、いわゆるイギリス人がまったくといっていいくらい出てこない。こちらの耳にもなまりのきついのがわかる英語が飛び交う。「白人」抜きの登場人物たちばかりの俳優のアンサンブルがよく、ホテル周辺の小さな世界を描きながら世界に通じている。

スティーブン・フリアーズの演出はすこぶる硬質で、手術や下半身がらみのシーンでもおよそ格調が崩れない。
日本の宣伝はもっぱらオドレイ・トトゥで売っているが、主役はキウェテル・イジョフォー扮する男の方で、彼の素性を伏せておいて小出しに明らかにしていく構成は、ミステリ的興味でつなぐというより二人の心が通じてくるのにシンクロしているよう。肉体を伴わない以上に不思議なくらい蒸留された関係。
相当にエグいはずが妙に医者らしい律気さが出ているところがユーモラスなクライマックス。
(☆☆☆★★)