prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「笑の大学」

2004年11月16日 | 映画
初めと終わりが対応していない。
検閲を通るか通らないかの戦い一本で、あれだけ前半で“不許可”のハンコを押すのをなんべんも見せているのだから、“許可”のハンコが押されてショー・マスト・ゴー・オンとならないとおかしい。

検閲官が台本作家にあきれるくらい細かいケチをつけ、それに作家がそれを上回る知恵で切り返すあたりは、検閲官が演出家とも座主、あるいは映画監督ともプロデューサーあるいはもっととも見える膨らみを持ち、ピンチをチャンスに変えて行くエネルギーに感心する。

そしてお堅い検閲官が、自分のケチに対するリアクションに、マジメに考えたものに対するものだけについ反応してしまい、自ら芝居に乗って文字通り走り出すシーンは、カメラワークもメリーゴーランドのようで音楽も何やらフェリーニのジンタを思わせて最高、検閲官の中の自由な“笑い”が表に出てくる。このあとすぐハンコが押されるのかと思った。

だがこの後、お話は蛇足的にあくまで戦時中の検閲官と台本作家の物語に縮まってしまい、せっかくの真剣な言葉のやりとりが持つエネルギーをむしろ損ねた。
馬鹿っ正直な抵抗を採らないことは冒頭の左翼作家の扱いで見せていたはず。

客に見てもらってなんぼの作家ではないのか。
それに実際の劇団を見せている分、上演できなかったら彼らは食いっぱぐれるはずと気になり、いくら作者に不親切といってもそれはひっかかる。

舞台は見ていないので映画を見ただけで、以上のように書いたが、どうも調べてみるとやはり舞台は笑いで終わるらしい。そうだろうと思う。
(☆☆☆★)


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