prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ヒナゴン」

2004年11月29日 | 映画
広島の田舎の比奈町に類人猿ヒナゴンが現れるという噂が流れる(実話ネタらしい)。
ただし、それで騒動が起こったのは30年前で、本筋は昔ヒナゴンを見た子供たちの一人が町長になり類人猿課を発足させて、昔の仲間が集まるところから始まる。しかしそれも町の合併話が核になってはいるが、全体としては田舎町の日常的な描写が大半を占める。
地方ロケの効果(協力した組織・団体一覧の数が多いのでびっくりする)や、誰かにいつも見られていてやたら情報が早く駆け巡るところ、いい歳した男同志が子供みたいに手四つで力比べをするところなど、描写そのものはおおむねうまくいっているが、それでも騒動が起こりそうでほとんど起こらない作り方で2時間はややキツい。ヒナゴンそのものはゴーストのようにボカしている分にはいいが、普通に写すとヒトの骨格と歩き方がバレる。
子供が大をモラしたパンツを画で見せるのは汚なすぎて感心しない。出てくるタイミングが妙に遅いのでなお目立つ。


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「マルセイユ・ヴァイス」

2004年11月29日 | 映画
アメリカ製みたいにバディもの仕立て。それもC調の白人と堅物の黒人の組み合わせなのだから、フランス映画も変わったもの。もっともアクション・シーンの切れ味やストーリー・テリングはややタルい。
ボート・チェイスではアクションより地中海の景色に見とれてるみたい。
(☆☆★★)


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フィリップ・ド・ブロカ

2004年11月29日 | 映画
フィリップ・ド・ブロカ監督死去。
この人はなんといっても「まぼろしの市街戦」だろう。今みたいに「ぴあ」がバカでかい情報誌になる前、「もあテン」もう一度見たい映画リクエストでは、ド・ブロカの「まぼろしの市街戦」が「シベールの日曜日」あたりと並んで上位に来ていた。

初めはテレビの深夜放送で見た。劇場では今はなき「三鷹オスカー」でケン・ラッセルの「恋人たちの曲・悲愴」と一緒という妙な組み合わせで見た。精神病患者がぞろぞろという内容からテレビでは放映できなくなり、割と最近DVDが出るまで文字通りまぼろしだった。

第二次大戦末期のフランスの田舎町からドイツ軍が形勢不利と撤退する前に爆弾を仕掛け、その情報が漏れたもので町から人が避難してしまい、精神病院の患者だけが残る。“正常”な人間たちが戦争で殺しあっているのに患者たちが居残った町は平和という皮肉も痛烈だけれど、患者たちが思い思いに扮装を凝らしたメルヘンチックな雰囲気がこの監督の持ち物で、フランスの田舎町をそっくりニューヨークに移してしまう「君に愛の月影を」や、ジャン・ポール・ベルモンドの小説家が自作中で大活躍する「おかしなおかしな大冒険」などもそうだった。

日本公開作は75年の「ベルモンドの怪盗二十面相」が最後だから、一般にはほとんど忘れられている監督ということになるだろうが、こっちが「心の王様」(「まぽろしの市街戦」の原題)と、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドのヒロイン・ココリコを忘れることはないだろう。