prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「犬神家の一族」

2007年01月18日 | 映画
脚本も演出も30年前のとほとんど同じで出演者もかなりだぶっている、という芝居の再演を見るようなリメーク。全体に細かい芝居で練れたところは増えた。

今でこそ市川崑の横溝ものは定番になっているが、どろどろして泥臭い横溝ものとモダニズムの塊のような崑タッチの取り合わせは、30年前ははなはだ意外だった。
その意外性を演出しさらに大宣伝と多角的なメディア戦略で客を動員する角川春樹のプロデュース感覚こそが旧作の存在意義だったわけだが、それが常識となっている今では当然それはすっぽり抜け落ちている。
純粋に映画としての出来という点では旧作はさほどのものではなかったわけで、正直どういう狙いのリメークなのか理解に苦しむ。
全体にキャストの年齢層が上がった分、華やかさにやや欠ける。

尾上菊之助が真っ白けで無表情なマスクをかぶっていても眼技や見栄を切るような表情の作り方でいろいろ工夫して見せているのは、さすがに歌舞伎役者。
(☆☆☆)