prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「椿三十郎」

2007年12月14日 | 映画
オリジナルは95分、今回のが115分。同じシナリオでなんで20分も長くなるのか。
黒澤はリハーサルを徹底して芝居を凝集させて役者が互いにセリフの尻を食い合うようになってから撮るという。だからオリジナルでは三十郎は若侍たちが考えている程度のことはとっくにお見通しで、相手が言い終わる前にかぶせるように言うのが多くて、そのいささか失礼な喋り方がキャラクターでもあるし、ユーモアにもなっているが、今回は相手がセリフを言うのを待ってますという感じで、どうもテンポが出ない。

シナリオがいいからある程度の質は保証されてはいるが、このシナリオはもともと不器用でぶっきらぼうな三船のキャラにあて書きされたものだから、ちょっと事情が違う。

オリジナルが立ち回りで血しぶきを出したのが後の映画の流血描写をエスカレートさせたのを黒澤はひどく後悔していたようだが、今回はそういう描写を避けて、特にラストで「いい刀は鞘に入っている」というセリフを生かした趣向は、先達へのリスペクトとしてなかなかよく考えた。「たそがれ清兵衛」中盤の大杉漣相手の立ち回りをヒントにしてるのかなという気もする。ただし、それ自体の迫力、とするとどうか。

織田裕二は今40歳だから、オリジナル出演時の三船敏郎の42歳とそれほど違わないのだけれど、若侍の方が似合いそう。キャスト全般を見ても、日本人が子供っぽくなっているのが強く感じられる。
悪玉たちがやたらと物をつまんで食べているのが森田流。
(☆☆☆)