prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた」

2007年12月19日 | 映画
エンド・タイトルに「この映画をエイドリアン・シェリーの思い出に捧げる」と出たので、誰かと思うとなんとこの映画の監督・脚本で、メガネをかけたウエイトレス役で出演もしている人だとわかって仰天。
調べてみると、自宅に泥棒に入った19歳のエクアドル人違法労働者を見つけて殺されたらしい。なんてことだ。

アメリカの田舎町のウエイトレスというと、横暴な夫と低賃金がつきものイメージだが、まったくそのまんま。低賃金の方はおとぎ話的な展開になるが、夫役のジェレミー・シスコが幼児性から抜けられない自分勝手で暴力的で、ヒロインを閉じ込める生きている牢獄みたいな役を、一方でこういう奴いるよなあと思わせるように演じている。女性の作者でないと、ここまでどうしようもない男は描かない気はする。
こういう夫が妻が男とうっかり話でもしようものならどれほど嫉妬するかわからないが、産婦人科医ならいくらなんでも会ってもとりあえずおかしくないというお話の設定がうまいところ。

この夫が自分の子供を妊娠した妻をつかまえて、赤ん坊が生まれても自分より愛してはいけないなどと言うのには呆れてしまうが、この男の幼児性が本物の子供が生まれると、底が見えてしまう展開が鮮やかで、ラストのカタルシスはなかなか。
それだけに、作り手の運命には無常を感じてしまう。
(☆☆☆★)