オープニングの「日本映画を愛する人たちによって作られました」云々の字幕は言わずもがなだが、続くムシロ旗を押し立てた農民の大群衆シーンのスケールに驚く(これだけ大勢が集まって音が音楽だけで効果音がゼロというのが妙な感じだが)。
前進座の俳優たちの風格、農民に扮する人たちのそれらしさ、などは見ものだけれど、箱根用水を掘る話というのはやはり地味な感じは免れないし、侍の横暴さと民衆の団結の強調など昔の左翼映画という先入観を補強してしまい、どうも乗りにくい。
意味なく辻斬りする一方で主人公に何やらホモ的な思い入れをする総髪の侍のキャラクターなど、後年の山本薩夫監督作の政治家のそっくりショーに通じる通俗性と通じている気がする。
(☆☆☆)