術中覚醒、といって全身麻酔をしている間2100万分の1万といった確立だが(けっこう高いぞ)意識があって体が動かないという状態になるという。それをモチーフにしたサスペンス。
困るのは、何しろ当人がいくら意識があったところで全然動けないというところで、楳図かずおの「うばわれた心臓」みたいな短編ならいざ知らず、長編映画にするには相当ハードルが高い。
そこで、執刀医が患者と個人的な友人にすることによって一種の代理人として設定し、手術そのものにまつわる陰謀、患者の幼児体験、などを絡め、それから患者の分身(離脱した幽体というべきか)が本体から離れて歩き回りある程度動きを導入できるようにしている。工夫の存するところです。
ただ、どうしても基本的に動きようがないモチーフである弱みはついてまわって、当人が直接どうにかするのをアクションで見せることができない。
意識の流れ風の描写などを混ぜてアーティスティックな技法を多用しているけれど、割と常識的な処理の範囲内に収まる。
この手のモチーフで印象的なのは吉村昭の「少女架刑」。死んだ少女の意識が体を離れて自分の肉体が解剖されて標本になるまでを目撃し、時に肉体に半ば戻って体験するという作品。