相当に複雑な背景と展開の紛争なのだが、映画では「敵」の姿はおおむね抽象化されて、ミサイルや戦車といった武器のイメージにまとめたり、人間が出てきても戦隊ものの悪役みたいに没個性的な調子で描いている。
基本的にロシア側から描いているのだろうけれど、おかげでどっちがどっちだかよくわからなかったりする。
そして本筋はごく単純化して戦争が勃発して戦地のただ中に孤立した幼い息子を救いに行く母親の話に絞って、どの方面からも文句をつけられないように仕立てています。政治的に問題がありそうな感じはあるのだが、こちらに知識がないせいもあってよくわからない。
母親といっても前半ひらひらのワンピース着ているところはほとんど幼いくらいの印象で、戦地を突破するのにパンツを履くあたりでイメージを変える。男の兵士が脚が見えなくなった、とブーたれるのが観客の代弁をしているみたい。
予告編だと「トランスフォーマー」のロシア版みたいだったけれど、ロボットはすべて子供の幻想として描かれていて、それが現実に入りこんでくるわけではない。CG技術そのものは優れているけれど(ハリウッド製大作のCG部分を担当していたりするから不思議はない)、全体にかっこに入っているみたいで、極端な話CGがまったくなくても、あるいは劇中劇のように人形でもぬいぐるみでも映画は成立します。
オープニングに20世紀フォックスのサーチライトが登場、メインタイトルの表記はキリル文字(ロシア式アルファベット)だが、中にA.C.E.(American Cinema Editors =全米編集者協会)のアルファベットが見える。
ここで見せ場が始まるか、というところぷつんと切れるところが多い割りに流れは途切れない。推測だけれど、ロシア側が長々と撮りすぎたのをアメリカ式のてきぱきした編集でまとめたのではないか。
あと、「恋人たちの予感」のDVDが写る場面があって、すぐ後にこれの有名なシーンがうまく引用されます。知らなくてもわかるし、なかなか精錬された表現。
見せ場はなんといっても重量感たっぷりの銃撃戦と戦車の砲撃戦。
特に戦車は何という機種なのか知らないが全体にアルマジロかセンザンコウの鱗のような装甲を貼り付けた異様なデザインで、このあたりはロシア製らしいお手のもの感があります。
(☆☆☆)
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