トラヴァース女史がアイルランド系だとは知らなかった。アイルランド系のイメージ通りに父親は呑んべで空想家。その空想家の面が娘に受け継がれたということだろう。現実と空想がふっと混ざるような描き方は幻想的に現れる白い馬ともどもケルト的。
ちょっとわかりにくいのは、ディズニーが主張するところのメリー・ポピンズ=父親のことという理屈。姿かたちはもちろん、しつけっぷりもメリーはどう見ても伯母さんの方だ。
ディズニーといったらとにかくストーリー部門に惜しみなく大量の人をつぎ込んで徹底的に練り上げさせるのだが、ここではドン・ダグラディひとりにまとめている。実際に「メリー・ポピンズ」の脚本にクレジットされているだけでももう一人ビル・ウォルシュの名前が見える。ドラマ化するための単純化だろう。ダグラディはライター兼アニメーターなのだが、それとアニメとの合成にこだわるのと関係あるのかどうかはわからない。
原作者と戦うのが脚本家と作詞・作曲コンビというのはよく考えてみるとおかしいので、現場のプロデューサーと監督はどうしたと後で考えると思えてくる。ディズニー・プロにあっては、スタッフは即ちウォルトの代理人ということか。
「メリー・ポピンズ」の楽曲を全面的に読み直すような使い方。ディズニー映画で作られなかったらほとんどありえなかっただろう。
(☆☆☆★★)
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