事件の直接の発端になったいじめっ子に対して、外からあるいは上から倫理的に糾弾するよりは何をしたのかを改めて並べ上げていくことでいじめっ子の内部からの罪悪感が自然に湧き上がってくるあたりは相当に厳しい。おそらく父親のDVと金の力でスポイルされていた部分に初めて向き合ったのだろう。そしてその糾弾する側裁く側も無傷ではいられない。
自己保身は当然中学生にもあるわけだが、まだ世間の垢にまみれていない分純粋に自分の弱さや罪に向きあえるフィクションならではの仕掛けが効いている。
やや気になったのは、事件の発端になった自殺といったん断定された生徒は当然回想でしか出てこないのだが、出てくると人の偽善性やたてまえを声高に糾弾してやまないキャラクターで、実際に近くにいたらなまじのいじめっ子より不愉快ではないかと思わせる。かなり観念的なキャラクターなのだが、それが回想というカッコに閉ざされた形で描けないので十分生きたキャラとして膨らみ切らず、かといって純粋に観念の結晶になるわけでもないので、何か不快感が滓のように残る。
裁判で証言席に立つさまざまなキャラクターが正面きった望遠レンズで左右対称の構図で捉えられた厚みのあるカットが何度も繰り返される。これは日本の裁判だから神に宣誓しているわけではないが、何か絶対的に正しいものに正面から相対している姿のニュアンスが出たように思う。
(☆☆☆★)

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ソロモンの偽証 後篇・裁判@ぴあ映画生活
映画『ソロモンの偽証 後篇・裁判』 - シネマトゥデイ