prisoner's books - 2016年04月 (21作品)
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映画化であまりにも有名な作品だが、映画では描ききれなかったディテールが豊富で興味は尽きない。たとえば隊の編成の大半を士官学校卒の下士官にしたのは、徴兵されてきた一般市民を戦闘ならともかく訓練で死なせるわけにいかないという判断から、というあたり後の日本軍が赤紙一枚で徴兵した兵を平気で使い捨てにしたのとは随分隔たっていて日露戦争前という時代を感じさせる。また軍隊の組織はどう統率されるのが健全なのかというテーマは小説に一日以上の長がある。自然描写の緻密さ、迫力、ことに寒さの中でどうすれば握り飯を凍らさないでおくかなどの描き込みも見事。
物理学は理論と実験の両輪が必要なわけだが、梶田先生は実験寄りの立場なのでカミオカンデに水を張るのに研究者や院生が総出でゴムボート出して作業したとか、南アフリカの元金鉱が地下1000メートルまで掘り下げられた(この金欲のものすごさ)壮大な跡地をカミオカンデと似た実験場にしているとか純粋な物理理論の解説よりは身近で具体的な説明が多くてわかりやすい。
とはいっても理論の部分は相当に難しくて別に解説署を先に読んでおいた方がいいかもしれない。
とはいっても理論の部分は相当に難しくて別に解説署を先に読んでおいた方がいいかもしれない。