ケヴィン・コスナーが低迷期以前のよきアメリカ人代表みたいな顔と体形を取り戻してきた(頭はカツラだろうが)のはキャスティングの狙いがずばり当たった感じ。
マハーシャラ・アリがごつい体格で軍人の役で出てくるので怖い役かと思ったら真逆の性格で、プロポーズするところなどそのためかえってストレートに幸福感が出た。
下手に差別などしていたら、結局不合理と非効率に陥る大原則が端的に出た。
白人女性であるキリスティン・ダンストの上司が差別意識などないとわざわざ言うのに対して、ない「つもり」なだけであることをさらっとオクタヴィア・スペンサーが言うのがNASAの職員たちみたいに高度な教育を受け差別は悪いことと知っていながら無意識にしているさまがちらちらと描かれる。
製作費2500万ドルは今のアメリカ映画としては少ない方だろうが、2017年8月現在で世界興業収入が2億2300万ドル。効率がいい。
タンスみたいなコンピューターがずらりと並べられてもコンピューター言語(FORTRANが現れたのが1954年、マーキュリー計画が始まる五年前)を理解して使える人間がNASAにもいなかったのでお荷物にしかなっていないなど、ドラマだから誇張もあるかもしれないが今では考えられない。
アポロ計画の時に使われたコンピューターが全部合わせても今の家庭用パソコン一台にも処理能力が及ばないなんて聞いたけれども、よくそれで月に行けたものだと逆に感心する。
このコンピューター導入によって計算用に雇われていた人間がお役御免になるというのも今に通じる皮肉。
マーキュリー計画で初めてアメリカ人として宇宙に行ったジョン・グレン(グレン・パウエル)がいかにもオール・アメリカン・ボーイ的な屈託のなさを見せる。この後上院議員になって、70を過ぎてからまた宇宙に行って老化現象にどう影響を与えるのか調査の対象になったのでした。
色味がちょっとカラフルながら半世紀前の時代色を出した。フィルム撮影にしたのもそれが狙いだろう。
(☆☆☆★★★)
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