prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「HELLO WORLD」

2019年10月09日 | 映画
よくある恋物語かと思うと本格的なハードSFに寄ってくるのにびっくり。

この世界は実は実在せず脳内に、あるいは(「マトリックス」ばりに)データの集積といった抽象にすぎないのではないかといった存在が揺らぐ思春期に抱きがちな疑いを片手に、同時期におそらく根っこは同じ恋愛衝動を片手に握って結び付けている。

主人公の本棚にグレッグ・イーガンがセリフに出てくるだけでなくその著書の早川文庫版がフィリップ・K・ディックのそれと共にずらっと並んでいるのが描かれ、さらにエンドタイトルでわざわざ書名を列挙してあるという念の入れよう。

スマートフォンを当然に使いこなす世界であるにも関わらず、男女とも紙の本の読書家の高校生という設定は珍しい。ある種世界から浮いた感じと自意識の強さ、それから時間の積み重ねに対する敏感さといった性格の表現として成功している。

ヒロインが最初から可愛いのではなく、およそとっつきにくい感じからだんだん構えが解けていき、主人公から見た姿だけ描くのでなくヒロインの方のエモーションが噴出するに至るプロセスがどきどきさせて恋愛ものとしても成功。

京都という 古都としての土地柄を時間の連なりと積み重ねに生かしたのと、日本的な 狐の面を 本来の頭の位置から下にずらしたタイムパトロール(ざっくり言うとそうなると思う)の異様なデザインが秀逸。
後半の斬新な画と音のつるべ打ちは圧巻。




10月8日のつぶやき

2019年10月09日 | Weblog