prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「さがす」

2022年02月02日 | 映画
初めのうち娘が失踪した父親を探すミステリものなのかと思っていると、途中から大きく話が転回して娘の出番が中盤なくなってしまうのは、ラストで回収するとはいえやや疑問。

こういう変則的な語りが、どう話が向かうのかという意外性と収まるところに収まる快感を併せ持っているのはわかるが、キャラクターの感情や行動を追うより、展開の恣意性の方が目立つ。

核になっている生き死にの問題が途中から出てくる分、お話の素材扱いになって軽くなった。
娘にとっては母親も大きな役割を果たしていたはずなのだが、そのあたりの描写も軽い。

「暗殺の森」について伊藤俊也監督が時制を交錯させる構成をとったことで監督のベルトリッチの美意識にかなう場面に集中できた代わり、キャラクターの造形について素朴に突っ込んでいくと案外弱い、と指摘していたのに近いものがあるかもしれない。

エンドタイトルで人の名前が流れていくうちのある一瞬だけ色がつく。
そして最後にストップする監督の名前の文字は色がつきっぱなし。
解釈すると、この映画の製作に集まった人たちがその時だけ監督の色に染まった図ということになるか。
製作委員会に個人名が入っているようだったが、だとしたら珍しい。

アダルトビデオを山ほど集めている爺さまが可笑しかった。それに対して若い男があまり興味を示さないあたりのねじれが面白いし全体のモチーフにも結びついている。

俳優たちは体臭まで感じさせる。街も田舎の風景も一種の匂いがある。