prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

巨大

2004年10月05日 | Weblog
いきなり寒くなり、長袖のシャツを探すが完全な冬物しか見つからない。衣替えなど考えもしない天気が続いて、いきなりこれだ。
第一生命ホールの平町公展の楽日にやっと間に合う。学校の先生をしながら創作を続けているのだが、その卒業生と思しき何百何千という顔と名前がずらっとうねるように学校の大パノラマの巨大な壁画にびっしりちりばめられているのは圧巻。


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ビューティ・パーラー(8)

2004年10月04日 | ビューティ・パーラー(シナリオ)
○ 店
一同、集まって鳩首会議。
笈出「くそっ…くそっ!」
と、しきりと怒っている。
秋月「そう怒らないでよ、あの時は仕方なかったんだから」
笈出「関係ない、作戦が失敗したから怒ってるんだ」
小牧「(皮肉に)ほんとにぃ?」
笈出「(強がって)あんなのは、なんでもない」
卯川、困ったように、気の毒そうに笈出を見ている。
小牧「(卯川に)口直ししてやったら?」
笈出「(また怒って)余計なこと、言うな」
ひどく落ち込んでいる様子。
秋月、突然ぶすっと不機嫌になり、メイクをごしごしこすって台無しにしてしまう。
卯川「(びっくりして)どうしたんですか、一体」
秋月、ぶすっとして何も言わない。
また、表が騒がしくなる。
和田「(覗いてみて)…困ったな」

○ 表・道路
また新しくマスコミたちがやってくる。

○ 同・物陰
イヤな顔をしている鮫島。

○ 店
裏を見に行く和田。

○ 裏
こっちにもマスコミがどっと押し掛けてくる。

○ 同・物陰
開き直って姿を現す犬山。
しかし、他のマスコミがフライングしようとするのは先輩面で抑える。
      ×     ×
同じく後から来た連中を抑える鮫島。

○ 店
和田「(戻ってきて)どーしよーもないなぁー」
お手上げ状態。
秋月「そんな、無責任な」
笈出「(意を決して)こうなったら、ベストは望めない。
ベターで我慢しないと」
卯川「どういうこと?」
笈出「ここまで騒ぎが大きくなると、マスコミは手ぶらでは帰らない。
何がなんでもスキャンダルをでっちあげますよ。
同じスキャンダルになるなら、できるだけ傷がつかない相手を選ぶしかないでしょう」
和田「誰だい、そりゃ」
笈出、畠山を指す。
畠山「(当惑して)おい…」
笈出「一番釣り合いがとれる組み合わせでしょう」
畠山「俺に尻をふかせる気か」
小牧「もともとマスコミがここに押し掛けてきたのも、あなた(畠山)がいるからでしょ」
畠山「(あわてて)ちょっと、ちょっと」
和田「(ぐぐっと畠山に迫る)あなたが成功するのに、うちの卯川は随分貸しがあると思いますよ。少し返してもバチは当たらないと思いますけどね」
畠山「(笈出に)おい、話がこんがらがってから、俺にふるなよ」
笈出「何言ってるんですか。ついさっきはぼくが卯川さんと関係するのはけしからん、クビだとと言っておいて」
卯川「あーっ、めんどうくさい。
別の人間になりたくなってきた」
小牧の声「(唐突に聞こえる)そう、すごいでしょ」
一同、あたりを見渡す。
控え室から小牧が携帯で誰かと話しながら現れる。
小牧「すぐ目の前にいるのよ、卯川つばさももちろん畠山晴海も」
と、表のカーテンに近づく。
どうやら、すぐ外にいる知人と話しているらしい。
和田「おい、外と話してるのか」
小牧「(答えず)現場内部から実況生中継でお送りしています」
と、レポーターみたいな口調で話す。
中の一同、腰を浮かせる。

○ 外
すでにマスコミがひどく増えて、交通の邪魔になっている。
マスコミのみならず、近所の人や、ただの通りすがりや野次馬や物好きや、人・人・人で溢れ返り、文字通りの人の海といいたい光景になっている。
小牧の声「外から中、見える?」
野次馬たち…、その何人もが手に手に携帯で話していて、誰が小牧の相手なのかはわからない。
というより、小牧が相手にしているのは、この群衆一般だ。
不特定多数の誰かの声「…見えない」
また表が騒がしくなる。
誰かの声「あ、誰か来る」
どっと動く群衆。
そのうち何人かは、モバイルパソコンとつなげたビデオカメラを構えている。

○ 中
その騒ぎが聞こえる。
和田「今度は、なんだ」
覗きに来る一同。

○ 表・道路
その、人の海がモーゼを前にした紅海まがいにぱかっと、二つに割れる。
割れた間に、悠然ともったいぶって姿を現したのは、野村だ。
      ×     ×
卯川「(怒りを込めて)あのバカッ」
      ×     ×
スター然と得意気にあたりの人間たちを仕切っている野村。
マスコミ陣は、とりあえずマイクとカメラを野村に向けている。
しかし、本質的な軽薄さ、貫禄不足は否めない。

○ 店
秋月がテレビのスイッチを入れる。
チャンネルをかちゃかちゃ変えてみるが、どこも普通の番組をやっている。
秋月「だいじょうぶみたい」
和田「甘いよ」
と、自分のパソコンを見ている。
店の外の情景がネットで生中継されている。
それも複数のホームページでだ。
醒めた無表情で画面を眺める卯川。
やれやれというようにかぶりを振る。
卯川「個人テレビ局がいっぱい押し掛けてるみたい」
和田「(ぼそっと)もうだめだな」
畠山「社長がそんなこと言っていいんですか」
和田「だって、どうするんだ。
絶対絶命だろう」

「ビューティ・パーラー」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



「アラモ」

2004年10月04日 | 映画
何しろベトナム戦争の時ジョン・ウェインが愛国精神顕揚のために取り上げたような素材だから、またバリバリのアメリカ万歳映画をイラク戦争の最中に再生産したのかと思ったら、それほどでもなかった。オープニングの字幕でindianという言葉が堂々と使われているのには驚いたが。

アメリカというよりテキサスが独裁者から独立する戦争みたいな描き方で、テキサスというのはそれ自体今だに一つの独立国みたいなわけだと思う。
もちろん、実質的にはアラモの敗北を口実にメキシコから奪ったものだが。

およそ女っ気のないキャスティング。だからといって男くさいわけでもなく、ドラマ的にはかなり淡白。デイビー・クロケットがメキシコ軍の軍楽に対抗してフィドルを弾くあたりが面白い程度。
戦闘シーン、アラモ砦の攻防が夜戦というのは意外。負け戦にふさわしい感じはするが、やはりちと見ずらい。
(☆☆★★★)


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愛の落日(「静かなアメリカ人」)

2004年10月03日 | 映画
グレアム・グリーンの原作は読んでいなかったが、見てすぐ買った。
一人の女をはさんだ恋敵同志の二人の男が、しかし互いに友人でもあるということを、片方の男は期待するが、もう片方は無神経にあまり悪意のないまま結果として裏切る、という関係は、「第三の男」にも共通する。その無神経な方が金があり悪事にも加担していて、そのくせ妙に無邪気で魅力的なところも。

この無邪気で無神経で金とパワーがある「アメリカ」人の性向を、Quiet「静かな」と言い表わした皮肉。
アメリカはここで描かれたベトナム介入以後も、共産勢力など(今ならアルカイダ)の敵を、「敵の敵は味方」と支援し、しかし敵を追い出した後必ず裏切られて(?)、新たな敵とするということを繰り返している。フセインにせよビンラディンにせよ、ノリエガにせよ、いったんは支援した相手だ。
それが敵にまわるのは権力の法則だからでもあるが、アメリカの無神経さと無邪気が裏返って傲慢となり、感情的な反感を必ず買うからだ。

原作がどの程度そういう一種の図式に立っているかは未読なので不明だが、この映画はかなり政治的な線がはっきりしている。そのため、この作品は9.11のあおりをくって、公開が遅れたという。
ただし映画は政治の絵解きではなく、もっぱら小さな三角関係の揺れを追っているうち、いつのまにかそういう大きな世界の激動の上に立っていたことに気付く作りは、まず物語の見事さで堪能させる。その意味で製作にアンソニー・ミンデラ(「イングリッシュ・ペイシェント」「リプリー」「コールド・マウンテン」などの文芸映画の作り手)が噛んでいるのが目を引く。

フィリップ・ノイスは「今ここにある危機」の監督だが、実はオーストラリア人。最近は成功したせいか逆にハリウッド的大作からときどき離れる。

マイケル・ケインの初めの方のアップで、目が変にとろんとしている。アヘンをやっている設定なのだろう。本当にやるわけにいくわけないからCGか。芸が細かい。もちろん演技そのものはもっと細かい。

原作は読み始めたばかりだが、場面構成はすでにまったく違う。クリストファー・ハンプトン(書簡体小説をドラマに仕立て直した「危険な関係」の名脚色)とロバート・シェンカンが、どのように物語を組み立て直したか読み進むのが楽しみ。
(☆☆☆★★)


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ビューティ・パーラー(9)

2004年10月03日 | ビューティ・パーラー(シナリオ)
○ ブラウン管
表の戸を開けようとする野村。
      ×     ×
思わず中から押さえる笈出。
もともと鍵がかかっているのだし、もちろん開かない。
その様子はブラウン管には写らない。
      ×     ×
裏口を開けようとする野村。
こっちも同様。
      ×     ×
やがて、ノックの音、ベルの音、大声などなど、さまざまな呼び出しが響いてくる。
しかし中の一同は、貝になったようにそれらを一切無視する。
      ×     ×
やがて、野村はブラウン管の中でレポーター相手に勝手に独演会を始める。
「卯川さんとの噂は本当ですかっ」
「すでに入籍したと言われてますが」
などなど。
鮫島「噂を流したのは、野村さん当人という噂が流れていますが、本当ですかっ」
聞きとがめた野村が反撃に出る。
野村「嘘ですっ、デマですっ」
      ×     ×
卯川「よく言うわ」
      ×     ×
日が落ちて、外は暗くなっているが、外の騒ぎは治まらない。
一同、ブラウン管に見入っていて、表の実景には目もくれない。
外で大勢がうろうろしているのがカーテン越しにわかるが、それをじかに見ようとする者はいない… 小牧が携帯でぼそぼそ話している。
表の情景を直接見ようとしてか、カーンに手をかけた秋月に、 和田「やめろよ…」
弱々しい声をかける。
秋月「あんな勝手なこと喋らせておいていいんですか」
突然、外が明るくなり、群衆がざわめく。

○ 外
マスコミが照明をたいている中、店の中は暗いままでいる。
その店の看板の照明がつけられる。
集まっていた連中が、一斉に注目する。
「なんだ、やっぱりいたんじゃないか」
「何してるんだ」
ざわつく集団が外装のマジックミラーに映っている。

○ 中
畠山「誰が明かりつけたんだ」
卯川「(のっそりと現れ)あたし」
和田「どうした」
卯川「出てく」
和田「無茶言うな。
ハイエナの群れに飛び込んでどうする」
卯川「いつまでもここでじっとしているわけにはいかないでしょう。
これ以上迷惑はかけられないし」
秋月「(横から口を出す)ちょっと、面白いよ」
笈出「何」
秋月、表のカーテンを少し開けてみる。
外でマスコミや野次馬がたむろっているのが見える。
しかし、マジックミラーなので、外からは中は見えない。
特に、外で報道陣がやたらライトを焚いて明るくしているから、なおのことだ。
秋月、それを確認して、カーテンを大きく開ける。
野次馬たちの方が、見る側のつもりで店の中の人間に見られる側にまわっている。
卯川もいったん我を忘れて見物にまわる。
      ×     ×
店の中と外が通底する。
店の中の人間たちにとっては、外のバカ騒ぎは逆に面白い見ものだ。
今までこそこそしていた分、異様に盛り上がって、ガラス一枚隔てた外のマスコミ・一般の野次馬入り乱れてのぐちゃぐちゃの混乱に向かって、ガッツポーズを見せたり、互いに抱き合ったり、Vサインを見せたり、ゴリラのように胸をどかどか叩いたりする。
店内の人間たちの間に、一瞬だが分け隔てのない連帯感が生まれる。
しかし、外の人間たちはそれは見えない。
それをいいことに、中は中で、そして外は外で互いに何の干渉もなく、勝手に盛り上がっている。
その中で野村一人が、せいぜいぴょんぴょん飛び跳ねてまわって注目を集めようとするが、まったくムダ。
蝿が飛んでいる程度の注目しか集まらない。

○ 中
小牧「(携帯で外と話している)…うんうん。
わかった。
(携帯から耳を離して)焦ることないと思うよ。
野村相手じゃ、マスコミも一般大衆も満足できないみたいだから」
笈出「タマが小さいってことか」
和田「じゃ、誰が相手なのを期待してるんだ」
小牧「それはもう…」

○ 外
興奮・羨望・好奇などなど火を吐くような感情に噴き上げられた群衆の目・目・目。
それを映している、“ノア”外装のマジックミラー。
小牧の声「(携帯で話している声)それじゃあ、誰がいいと思う。
いや卯川つばさの相手」

○ 中
畠山「(聞いてびっくり)…俺?」
笈出「でしょうね」
畠山「冗談じゃない」
卯川、笈出をぴったりと見つめている。
笈出「何か」
卯川「いつも助けられてばかりで、一つこちらからも提案があるんですが」
笈出「何です」
卯川「この期待の高まりは使えるかもしれません」
畠山「使う?」
卯川「ちょっと」
と、笈出を少し離れたところに連れていって話し込む。
やや嫉妬の混じった視線で見ている畠山。
笈出「(話を聞き終え)…えーっ? そんなことできるんですか」
卯川「いちかばちか、です。
だめでもともと」
と、和田のところに寄ってくる。
卯川「社長」
和田「何」
卯川「もし、この場を脱出できたら、独立を認めてくれますか」
和田「脱出?」
笈出「どっちにしてもこのままじゃ、彼女の商品価値に傷がつくだけでしょう」
和田「そうだけど…」
笈出「もう独占しておく意味はないんですよ」
和田「(気押され)わかった…何考えてるんだ?」
卯川「ちょっと貸してもらえます?」
と、小牧の持ってきたビデオカメラを手にする。
小牧「どうするの?」
卯川「いいから…(和田に)社長にもやってもらうことがあります」
和田「(思わず)うん」

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ビューティ・パーラー(10)

2004年10月02日 | ビューティ・パーラー(シナリオ)
○ 表・外
鮫島「(携帯で話している)…ああ、こっちには動きはない」

○ 裏・外
犬山「(相手している)こっちもだ」

○ 中
卯川「(何を聞かされたのか驚いている)えーっ」
和田「冗談じゃないぞ」
笈出「いいから。
迷ってる時間はないんです。
…(卯川に)いいですね」
卯川「(決心してうなずく)やってみます」

○ 裏
鮫島の声「あっ」
犬山「どうした」

○ 表
外にディスプレイされていたテレビの行列に電源が入る。
反射的に一斉にカメラがディスプレイに向けられる。
まず、いつも流している畠山が卯川を世話している宣伝用の映像が流れる。
なんだ、というような外の反応。
と、続いてディスプレイに店の中の情景の中継が映し出される。
「あ、店の中だ」

○ ディスプレイ
ぐらついた、家庭用ビデオで撮った映像が並ぶ。
店の中の光景が生中継されている。
野次馬たち、自分たちが映っているマジックミラーの隣のディスプレイを見ている。
外から少し離れれば、マジックミラーに映っている店の外と、ディスプレイに映っている店の中が一望のもとに見渡せる。
両者の間をせわしなく行き来する眼…肉眼と、カメラの眼とを問わず、さまざまな角度と種類の視線が交錯する。
やがて、ディスプレイの映像が安定して、鮮明になる。
外の一同、息を殺して、何が映るか期待して待つ。
現れたのは、卯川の姿だ。
一瞬、群衆から吐息のようなものが漏れる。
高まる期待。
やがて、卯川の傍らに畠山が姿を現す。
仲睦まじげな二人。
かなりぎこちないしわざとらしいのだが、群衆は食い入るように見ている。

○ 裏
犬山「(連絡を受けて)…なんで、そんなものを放映してるんだ?」
鮫島の声「わからん。
開き直って煽るつもりか?」
浮き足立ちかける犬山。
カメラ、店の外面を覆うマジックミラーに接近する。
そして、そのまま鏡面を突き抜けて、鏡の中の世界…であると同時に、店の中に入り込む。
(ここで、作品世界の幻影・幻想は笈出一人のものにとどまらず、外でたむろしている群衆一般に解放されることになる)。

○ 外装の鏡の中にして、店内
群衆が店の中になだれこんで卯川と畠山を取り囲み踊り出す。
“現実”から飛躍した、時ならぬミュージカル・ナンバーが展開する。

○ 表(現実に戻る)
群衆、水をうったようにディスプレイの映像に見入っている。
突然、店の外の照明が消え、同時にディスプレイも真っ暗になる。
ざわめく群衆。
間…。
店の照明がつく。
マスコミの照明も向けられる。
ライトアップされた店の前。
音楽がかかる。
店の戸が開けられる。
期待は頂点を迎える。
二人の人間が舞台に姿を現した。
笈出と、卯川だ。
しかし、卯川はまったく別人のように扮装を変えている。
肩すかしを食った態で、戸惑う群衆。
「どうなってるの? 違うのが出てきた」
「なんだ、あいつら」
などの、ぼそぼそした会話が交わされる。
鮫島「おかしいな」
犬山の声「それ、おとりじゃないか?」
鮫島「え?」

○ 裏
犬山「さっき、裏口に出たのはおとりだった。
まただますつもりじゃないか」
こっちに少数いた群衆が、表にまわっていく。

○ 表
閉ざされた戸の前で、わざとらしく群衆に手を振る笈出。
同調する卯川。
しかし、群衆は白けている。
「何あれ、そっくりさん?」
「影武者じゃないのか」
しかし、あまりに仰々しい道具建てにつられて、二人に近寄ろうとする者はいない。
      ×     ×
笈出「(小声で卯川と話す)驚いたな。
実物が出てきたのに」
卯川「見たがっていたものと違うのが出てきたんで、認めないんですよ」
笈出「誰だと思ってるんだろう」
卯川「あたしじゃない人」
笈出「なるほど。
では、演技派転向といきますか」
と、わざとらしく手を振る。
引く群衆。
      ×     ×
注視する鮫島。
犬山の声「気をつけろ」
鮫島「違う…みたいだ。いや…違う。本物はあんな手の振り方はしない。もっと慣れてるはずだ」
犬山の声「本当か?」
さらに、和田が現れる。
和田「えーっ、みなさまいらっしゃいませ。いらっしゃいませ。本日は卯川つばさと、こちらのノア美容院の見習い美容師・笈出健夫のロマンス発表会においでいただき、まことにありがとうございます」
はあー?という群衆の反応。
「おい、いくらなんでも嘘だろう」
「人をおちょくってるのか?」
      ×     ×
鮫島、群衆の中に野村がいるのを見かける。
鮫島「(野村に)どう思います」
野村「あれは…彼女じゃない」
鮫島「そうですか?」
野村「間違いない。
彼女があんなバカな真似 するはずない」
卯川と笈出、連れだって歩を進める。
群衆、モーゼを前にした紅海のように割れて、二人を通す。

○ 裏
なおも粘る犬山。
すうっと裏口が細目に開く。
犬山ら、少数者の視線が集中する。
戸が開く。
一斉に、フラッシュが焚かれる。
顔を出したのは、小牧だ。
小牧「(明るく)はーい」
手を振る。
ごそっと上の方から音がする。
犬山「(はっとする)」
誰かが二人、相次いで飛び降り、暗がりにまぎれてそのまま走り去る。
とっさに追いかける犬山、その他。
見送る小牧。

「ビューティ・パーラー」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



「ヴィレッジ」

2004年10月02日 | 映画
この監督(脚本も)の前三作と同じように、終わった時バカにされたような気がした。
舞台になる「絵にかいたような」昔風の素朴なアメリカの農村の描写が美術といい衣装といいあまりに出来過ぎで、それで道が全然通じていないって何だ、外と接触なくてどうして楽器まであるんだ、と。そのくせ薬はないのだね。こんな不自然な設定がどうやって成立するか頭に置いてオチを見せられて、なーんだと思わないでいるのはムリ。
なんとか言う小説との類似が指摘されているが、他にもいくつか思い出せるものあり。

それ以上に「村」とその支配者の閉鎖性を肯定する格好で終わるっていうのは、ナニゴトですか。あれは客観的に見てヤマギシ会みたいなエコロジーカルトではないか。

ラスト近くに監督の顔がちらと見えるが、見つけてもちっとも嬉しくない。
(☆☆☆)


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メンドー三題

2004年10月02日 | Weblog
ヤフーのジオシティーズが統合とかなんとかメンドーなことを言ってくる。
おかげでファイルの内容、細々と書き換えなければならないかも。
かなりの程度、機能をブログに移しておいてよかったみたい。

「ダイ・ハード」を仕事しながらちらちらと見ていたけれど、これテロリストを悪役にしているのではない(ただの泥棒じゃないの、と罵られるところまであり)、ビルを爆破したりしているからメンドーなこと言ってくるバカ出てくるのではないか。

全国東宝系で「感染」「予言」の二本立てが今日から公開だが、今は指定席にしているのに二本立てっていうのはどういうつもりだろう。片方だけとか、どっちかを先にしたいとかいう希望はどうなるのか。何がなんでも順番通り見ろっていうのかな。
だいたい、満席と決まっているわけでもないのに指定席っていうのも大きなお世話で、見てみなければどこがいいかわからないし、前に座高が高いのに来られてもよけるわけにもいかない。実は試験的にシャンテあたりでこの制度を導入した時、定員制にして立ち見が出ないようにするまではいいけど、頭から席まで決めるなと東宝にメールしたのですけどね。結局導入した。長々と列で待たされることはないのはいいけど。


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ビューティ・パーラー(11)

2004年10月01日 | ビューティ・パーラー(シナリオ)
○ 表
鮫島「(携帯で)おい…おい」
      ×     ×
走るのにかまけて、携帯に出られない犬山。
      ×     ×
鮫島「抜け駆けする気かっ」
裏にまわる。
と、どっとつられて他の群衆も追ってたちまち裏にまわりだす。
卯川と笈出、群衆を押しとどめるふりをする。
しかし、いったん始まった流れは止まらない。
たちまち、嘘のように店の前に人はいなくなる。
すばやく目だたないように姿を消す和田。
○ 裏
どっとやってきた人の壁に阻まれる逃げた二人。
一斉にライトが当てられる。
照らし出される畠山。
突きつけられるカメラとマイク。
畠山「なんですか」
その連れの隠した顔を見ようとする野次馬たち。
それを割って前に進み出てくる野村。
野村「(仕切ろうとする)はい、押さないで」
と、畠山に代わって連れに寄り添うようにする。
畠山、逆らわず野村に場所を譲る。
野村を囲む好奇心に満ちた顔・顔・顔。
ライトとカメラが集中して得意満面な野村。
…突然、まわりのざわめきが潮が引くように治まる。
不思議そうな野村。
野次馬たちがみんな引いている。
野村、ふと連れの方を見て、ふっとぶ。
(秋月の姿は、OFFで想像に任せる) 犬山「(カメラを叩きつけ)くそっ、またかっ」

○ 表
和田、車を回してくる。
和田「(ドアを開け)乗って」
人はほとんどいなくなったというのに、舞台から花道を辿るように見栄をきって退場していく笈出と卯川。
また群衆が戻ってくる。
笈出「行って」
卯川、一瞬躊躇するが、笈出にキスし、身を翻して車に乗り込む。
笈出、いささか驚くが、すぐぴしゃりとドアを閉め、くるりと群衆に向き合う。
走り去る車。
卯川はずっと振り返っている。
和田、運転しながらガッツポーズをとっている。
群衆はちらほらと戻ってくる。
身構える笈出。
しかし、もう笈出に構う物好きはいない。
傍らを通り過ぎていく人々。
笈出、店に戻っていく。
      ×     ×
散っていく群衆。
      ×     ×
ほうほうのていで逃げていく野村を追う秋月。
やがて、追うのをやめ、仁王立ちになって大笑する。

○ 店内
笈出、表の戸締まりをする。
一方、裏から畠山・小牧が戻ってくる。
畠山「どうだった」
小牧「成功です」
畠山、金色の取っ手がついたハサミを持ってくる。
笈出「…(どきっとする)」
畠山、冗談めかして笈出の左胸をハサミで刺すようなふりをしてから、胸ポケットに入れる。
畠山「負けたよ。
はなむけだ」
笈出「ありがとうございます」
笈出、ハサミを受け取り、頭を下げる。
畠山「それとも、縁切りのしるしかな」
笈出。
畠山「(小牧に)ところで、人を騒がせるの、好きでしょ」
小牧「そうだけど」
畠山「ひとつ、また騒がせてみませんか」

○ エンド・タイトル
卯川を世話している笈出の写真が、いくつもの雑誌のグラビアを飾っている。
新しく出した自分の店の前で腕組みしている笈出の記念写真。
店内に飾られている、かねて笈出が用意していた自分の写真。
      ×     ×
小牧がおしゃれな主婦代表という感じでグラビアに登場している。
小牧を世話している畠山。
      ×     ×
男に戻って笈出の世話になっている秋月。
      ×     ×
ゲイバーでゲイたちといやに嬉しそうに一緒にいる写真週刊誌に載っている野村。
<終>

「ビューティ・パーラー」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



「モンスター」

2004年10月01日 | 映画
ヒロインが子供の時、観覧車を「モンスター」と呼んでいたのが、後に観覧車にクリスティーナ・リッチと一緒に乗って恍惚としたり(それをわざわざ押していない演出)、弟妹のために売春していたのが後でばれて家を追い出されたという身の上話が、後でリッチに裏切られるラストにつながってきたり、ずいぶん考えられた構成。

頭から売春婦と見下して人間扱いしない男たち(女も)の不快さ。初めのうち、まともな男は殺さないでいたのが、最後には親切な老人(スコット・ウィルソン)まで手にかけてしまうエスカレーションは、実にイヤだが他にありえないと思わせる。アメリカは15%が世界的な水準で極貧だというが、そういうテレビや映画では、ほとんどいないことになっている層を描いているよう。

警察が仲間を殺された途端本気で捜査を始める。それまでナニやってたの。

ウィルソンとか、ブルース・ダーンとか70年代に活躍した役者がずいぶん老けた。シャーリーズ・セロン(いかにもアカデミー賞、という熱演)のメイクの凄さを考えるとこっちもメイク、ということはないか。エンド・タイトルを見ていたら、ダーンにちゃんとアシスタントがついていた。

写真は満員のため非常口から出された渋谷シネマライズの4階から撮ったPARCO前。
(☆☆☆★★★)


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こんな夢をみた

2004年10月01日 | Weblog
一晩に二つ、もっと見た気もする。
女が部屋の柱の後ろに手を入れて埃を触ると、その埃に引きずられて床の上を走り、走っているうちに女自身すりきれて埃になってしまう。
宙の無数の金属製みたいな球が浮いている。組成を調べようと地面の上で爆破すると、やはり無数の小さな球が浮くようになる。