prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「戦国自衛隊1549」

2005年07月12日 | 映画
タイムスリップものは辻褄合わせでひっかかることが多いのだが、ここでは過去を変えることによって変わってしまう現在(未来)がどんなものか、あるいは変えられたおおもとの史実がどんなものなのか、という比較の対象の描写がまるですっぽぬけている。比較の対象がなかったら、どう変わるのか、変わったらどうなるのか、わかるはずもない。
たとえばオープニングでふだんの自衛隊の描写を抜かしていきなりタイムスリップしてしまう。あるいは、自衛隊員がどういう生活をしているのか、何を愛して何を守ろうとしているのか、というのは台詞でちらちらと出てくるだけ。

早い話、信長とか斉藤道三とか木下藤吉郎とか蜂須賀小六とかいった人物についての予備知識を全然持っていない人が見て、これで話が通じるかどうか。話の設定の時点で、それぞれどういう立場なのかおよそはっきりせず、だから話が収まる所に収まってもなんか腑に落ちた感じがしない。ハリウッド風の作りではあっても、そういうところがヌケているのは感心しない。
金かかってるしスペクタクルとしては悪くないけど、それにしてはなんでこう画調をシブくしたのか、不思議。

城の武器庫の板壁に「火気厳禁」と書いてあるのは、当然だけれど気がきいている。
(☆☆☆)



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「丹下左膳 乾雲坤竜の巻」(1962)

2005年07月11日 | 映画
丹下左膳誕生編というか、主君に刀を手に入れるのを命じられた左膳が片目片腕を失ったうえ主君に見捨てられて復讐する話で、ずいぶん陰惨。こっちの方が本当なのかもしれないが、なんとなく丹下左膳ってこういう感じという先入観と、ずいぶんずれている。リストラされたサラリーマンがキレて暴れてるみたい。

脚本が「天草四郎時貞」で東映と縁ができた石堂淑朗で、加藤泰監督の作品とすると「真田風雲録」の一つ前で、今見ると60年代的な反体制劇みたいな匂いも感じる。

ローアングルを多用し天井を入れ込んで長回しで粘った演出や、長屋の汚しなどずいぶん凝っていて、「瞼の母」はそれでうまくいったのだが、ここでは素材と合わなかったみたい。

大友柳太郎の左膳は、ちょっとまじめすぎてキチガイじみた感じがあまりしない。
(☆☆★★★)



部屋干し

2005年07月10日 | Weblog
部屋干し用の折り畳み物干しの足が折れたので、新しいのを買いに行く。
洗濯物をかける手(というのか)を放射状に広げるものあり、二つ対になっていて互い違いにぐるっと反対側にまわして台をストッパーにして止めるものあり、ポールを中央に立ててハンガーを吊せるようになっているものありで、前のただ矢来をつなげたみたいのに比べて随分進歩というか、凝ったもの。
ただ、プラスチックの足が折れたのが頭にあったので、金属パイプ製のにする本当にそっちの方が頑丈なのか、使ってみないことにはわからないのだが。

母の個展の写真を撮ってくる。
フラッシュをたくのとたかないのと二通り撮ったのだが、全然色味が違う。たいた方が鮮明だが、会場の明かりが電球に近い蛍光灯のせいか、いささか暖色に寄りすぎ。補正ソフトで調整してみる。
やはり、本当はちゃんとライトを当てて撮るべき。



「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」

2005年07月09日 | 映画
オープニングで、タイタニック号を引き揚げた云々という新聞記事がちらっと出てくるが、同じダーク・ピット・シリーズの「タイタニックを引き上げろ!」(映画化が「レイズ・ザ・タイタニック」)にひっかけてあるにせよ、タイタニックが二つに折れて沈没しているのがわかっている現在ではアレはちと苦しい。

今回は、南北戦争の装甲船がなんとサハラ砂漠のど真ん中に現れるという奇想天外なハナシ。それをちゃんと画にして見せるのは立派。
ただし、そのむかし川を遡ってきた船が砂漠に埋まっている、というのと水質汚染が関係あるのかと途中まで勘違いしていた。その汚染物質をどこから持ってきたのかというと、よくわからない。

終盤、呆れるくらい物凄い御都合主義の連発になる。もともと金のかかったB級作品だとはいえ、笑って許せるほど笑わせるところがうまくない。
砂漠の撮影はご苦労様だが、見やすく撮るのが優先しているので対象にカメラが常に寄っていて、「アラビアのロレンス」みたいな壮大なショットはない。

アクション・シーンは量が多い割に平凡。
ロマンスが全然絡まないのはすっきりしているが、キャラクターが全然動かない現われでもある。
(☆☆☆)



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ロリコン小説「伊豆の踊子」

2005年07月08日 | Weblog
今頃だが、川端康成の「伊豆の踊子」を読んで、完全なロリコン小説なのに一驚する。今まで映画やドラマで見ていたのがいかに水で薄めていたか、わかった。実物読んでみないと、わからないものです。

14歳という年齢設定だけですでにもうアブナイし、名前ではなくもっぱら「踊子」とだけ記されるあたりも、後年の「眠れる美女」の美少女のオブジェとしての扱いと通じている。踊子が風呂から出てきて、前も隠さない素裸で手を振るなんて場面、ドラマで描かれたことあったっけ。

それにしても、これが一種の国民文学になっているのだから、今の日本のロリコン志向というのも結構根が深いのでは。



「ダニー・ザ・ドッグ」

2005年07月07日 | 映画
ボブ・ホスキンズ扮するボスがなんでダニーを“犬”として飼っていたのか、よくわからない。ストリートファイトで稼がせるため、というのは途中から出てきた設定だし、ただ借金の取り立てに使うのには手がかかりすぎると思うのだが。ダニーの母親を殺してどうのこうのというのも、それが関係あるのかどうかもはっきりしなくて、ただ悪役を憎々しく見せる味付けにしかなっていないみたい。

立ちまわりのスピードと変幻自在な動きが40過ぎて衰えていないのは立派。ただ、カメラの方でスローモーションにしたりコマ落としにしたりしているのは、余計。
(☆☆☆)



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「交渉人・真下正義」

2005年07月06日 | 映画


映画や小説の題名がぞろぞろ出てきたり、妙な語呂合わせが謎の仕掛けになっていたり、ヒッチコックの「知りすぎていた男」のクライマックスの趣向の再現といった遊びというのかゲーム的な部分は、シリーズで繰り返されるとちょっとひっかかる。
犯人の正体の「ジャッカルの日」ばりの処理は、いわゆるリアリティをもって描くのが難しいのでうまく逃げたという感じもする。
キマるはずのシーンがうまく決まらず、やや膨らみに乏しいのは惜しい。

地下鉄の路線名が全部架空のものだったり、駅名は実名でも全部明らかに違う駅をロケに使っている(大阪や神戸や札幌などでも撮っているらしい)のは、どういう配慮によるものか。
東京の地下に知られざるトンネルが通っているという都市伝説(とばかりはいえないが)を採っている割に、その謎の地下空間の具体的な姿をくっきりとは描いていないのは、残念。
(☆☆☆★)



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「運命じゃない人」

2005年07月05日 | 映画
4人の男女にまつわるエピソードが時間を行きつ戻りつして、場面がだぶりながら描かれる「パルプ・フィクション」的構成。さほどなんてことないエピソードでも語り口一つで“見せる”ように変貌する。ユーモアのセンスも冴えていて、試写ではあちこちから笑い声が聞こえた。知っている役者は一人も出てこないし、製作費も乏しいが、才気十分な感じ。
ただ、こういう作りだと締めくくりが難しくて、フェイントをかけたところでどっと客が帰りかけたのは、やや計算違い。
(☆☆☆★)



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電池と選挙

2005年07月04日 | Weblog
東京都議選の投票が、役所のロビーになったのでついでに使い切った乾電池をまとめて回収箱に持っていく。回収箱が監視員の机の後ろにあったので、投票を済ませてからいきなり横をすりぬけていったから驚いたみたい。投票そのものより、何事かいいことをした感じ。
投票した相手がトップ当選しているが、別にどうということない。
母親の応援を受けていた候補は、落選。言っちゃ悪いが、いい気分。

ガスコンロに使う電池がきれたと表示が出るので、テスターで調べてみたらまだちょっと減った程度。これで使えなくなるというのは、困るなあ。マッチで火をつけるといった操作ができればいいのだが、電池がきれるとガスが出なくなる設計。安全設計のつもりかしらないが、いきなり使えなくなるというのは、おそろしく不便。余計な真似しやがって。




力の入らない選挙

2005年07月03日 | Weblog
今日は東京都議選。といっても、候補者の名前、ひとりもまともに覚えていない。
有力候補が3人、そのうち2人が二世。その一人の母親が選挙カーで訴えていた。ぞっとしない話。
投票所が変更されて遠くになるのもぞっとしない。小泉政権への信任投票だなどとマスコミその他で騒いでいるが、大きいとはいえ東京は一地方自治体ではないか。どこに入れようと信任することにもしないことにもするつもりないぞ。勝手に決めるな。

「庭師 ただそこにいるだけの人」ジャージ・コジンスキー 高橋啓訳という本が出ているのを見て、「預言者」Being thereイエールジ・コジンスキーJerzy Kosinskiと同じ小説だと気付くのにちょっと時間がかかった。新訳が出たらしい。手許にある「預言者」青木日出雄訳を見ると、初版は昭和52年になっている。
「ピーター・セラーズの愛し方」が公開されて、セラーズが同作の映画化を熱望して実現したのがいくらか知られたせいだろうか。





「四日間の奇蹟」

2005年07月02日 | 映画


ストーリー、役柄、俳優、演出ともにマジメ人間が集まった感。感動させようとする臭みがあまりないので、感動ものが苦手なこっちにもあまりひっかからないで見ていられる。
石田ゆり子が途中で動きがとれなくなるので、このまま出番がなくなったらいかにもバランス悪いのではないか、と思っていたら「天国から来たチャンピオン」ばりの形で登場するようになる。それをなんでもないように見せる演出。
尾高杏奈が障害者の演技と普通の芝居とピアノを弾くところをこなしているのは、大したもの。
画面がややフラットな調子なのが残念。
岡本喜八が亡くなっているのに製作プロダクションに「喜八プロ」が名を連ねているのが不思議な感じ。
(☆☆☆)



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「埋もれ木」

2005年07月01日 | 映画


しかし、よくもまあと思うほど時流に抗した作り。
3人の女の子が語る物語の言葉のラクダやクジラなどのイメージが、直接描かれるのではなく、トラックの絵や風船などワンクッションおいて、「目に見えるもの」を言葉、物語が越えていき、自然にいわゆる「日本」の時間や空間の枠を解体していくように配している(えらい抽象的な言い方だけど、本当にそうなのですよ)。
古い回り舞台に出てくるセットの屋敷と、実物の家が移動するシーンとの対応など、直線的なつながりではなく飛躍と連想が組み合わさった詩的表現。

題名になっている村に埋まった木は「風の谷のナウシカ」の腐海を思わせる。
抽象画のような室内セット。

夜のシーンの、極端なロー・キーな割に細部まで写った画調は、オーロラの撮影用のNHKが開発した特殊カメラを使ったかららしい。「バリー・リンドン」ばりの凝り方。
ロングに引いて誰だかわからないような役に、松坂慶子がいたりする。

写真はシネマライズ渋谷の壁に書かれたサイン。
(☆☆☆)



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