prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「HAZAN」

2007年04月13日 | 映画
陶芸家というと今も昔も食えない仕事の代表みたいなところがあるけれど、辛うじてラストに救いがある以外はとにかくえんえんとビンボー話が続く。これだけ続くと、やっと世間に認められたからって終わりよければすべてよしって感じではなく(文化勲章をとるところは出てこない)、ビンボー話そのものを描きたいのだろう。なんで、というとよくわからないのだが、芸術至上主義だからそうなるというより、食えない生き方しかできない類の人間もいるのではないかと思わせる。共感はしないが。画面作りそのものは端正で、主演の榎木孝明・南果歩それぞれガラに合っている。
(☆☆☆)


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「アルゼンチンババア」

2007年04月11日 | 映画
アルゼンチン、という国名と、「エレンディラ」のイレーネ・パパスばりの鈴木京香のど派手な老けメイクから、ラテンアメリカ文学調のホラ話かと思ったらそこまでハジけてはいなかった。

堀北真希の親族が住んでいる普通の日本の地方都市と地続きで妙にエキゾチックな館とがつながっているプロダクション・デザイン(池谷仙克)が優秀。
館の前に広がっている草原とも田んぼともつかない空間が効いている。洋風の室内にコタツがあるのもいい。

堀北がこねるパン生地とか、ババアが集める蜂蜜、コタツですするインスタントラーメンなど食べ物がよく写るけれど、役所広司が作る曼荼羅やイルカの形をした墓石ともどももうちょっとフェティシュに撮ってほしかった。
大きく見て「死」を乗り越える話なのだから、モノが生きていないと、なんか物足りない。
役者はそれぞれ実力からして水準。
(☆☆☆)



「サブウェイ・パニック」

2007年04月09日 | 映画
1974年と、30年以上前の製作とあって、ニューヨークの地下鉄の佇まいもだいぶ違ってきている。
乗っている客がひどく貧乏くさいのに対して、強盗たちのリーダーのロバート・ショー(元軍人らしい)がぱりっとしたコートに蝶ネクタイといった金のかかった格好をしているのが皮肉。
日本人たちの描写がステロタイプのようでちょっとひねっている。
ほとんどコンピューターが使われておらず、もちろん携帯もない。

「ある戦慄」同様、事件の間ずうっと寝ている酔っ払いが乗っているのも、七十年代らしい。
役者がウォルター・マッソー、マーチン・バルサムと揃っていて、今みたいにやたら派手な見せ場こそないが、細かいところに味がある。
「フレンチ・コネクション」と同じオーウェン・ロイズマンの撮影で、彩度を落としたざらついた画調。
(☆☆☆★)


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『暁の7人』 80点

2007年04月09日 | goo映画レビュー

暁の7人

1975年/アメリカ

ネタバレ

重い

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

題名からすると「七人の侍」の焼き直しみたいですがナチス高官暗殺計画を扱った実話ネタで、計画が一応成功したあとのナチスの報復のすさまじさと、登場人物の「その後」の悲惨さに見終えてどーんとなります。


『ミラノの恋人』 80点

2007年04月09日 | goo映画レビュー

ミラノの恋人

1975年/イタリア

社会派メロドラマ

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

イタリアの南北問題と公害問題と盛り込んだ社会派メロドラマですが、主役二人がとてもいいので音楽ともども情感に浸れます。
特にステファニア・サンドレッリがやつれた感じのメイクでも綺麗で、まじめ映画なのにラブシーンが意外なくらい大胆でけっこうどきどきします。


「イマジン ジョン・レノン」

2007年04月08日 | 映画
「なぜぼくのことを歌っているんだ」といやに思いつめた表情でレノンを問い詰める青年の実写映像が不気味。これが撮られた時はまだストーカーというのがそれほど危険なものだとは知られていなかったのだろう。それを知らしめたのが、もちろんレノン自身の射殺事件。
「タクシー・ドライバー」のシナリオを書いたポール・シュレイダーも、やはり「なぜぼくのことを知っているんだ」という少年の訪問を受けたという。

正直いって、歌った当人が殺されてしまったとなると、愛と平和の象徴としての歌「イマジン」のあり方にはいくらか違和感がある。暴力を「防げなかった」とあげつらうのはないものねだりにせよ。
少し映画などで感動的に「使われすぎている」せいもあるか。


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「moog」

2007年04月07日 | 映画
シンセサイザーの生みの親、ロバート・モーグ博士のインタビューを中心にミュージシャンたちが楽器として育ててきた軌跡を追う。

リック・ウェイクマンがもともと二メートルの身長に加えてかなり太ったレスラーなみの巨体で登場(ただし意外なことにハゲてはいない)、博士と立ち話するのにかがまなくてはいけないからずうっと体を斜めにして壁に手をつけている図がなんだかおかしい。
最初ミニモーグを手に入れたのは役者のジャック・ワイルド(「オリバー!」「小さな恋のメロディ」のね)がなぜか買っていて壊れてると騒いだのを半額で引き取ったらちっとも壊れてなかったというのもありそうな話。

「スイッチト・オン・バッハ」が決定的なターニング・ポイントになったと語りながら、なぜかウェンディ(当時はウォルター)・カーロスが出てこないのは不思議。


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「パフューム ~ある人殺しの物語~」

2007年04月06日 | 映画
原作は読んでいないが、香水を作る香料のベースが4×3+1=13種類、というところで、キリストと十二使徒にひっかけているな、と直観する。
主人公を処刑するのにわざわざ十字架を用意するあたりからも、ハズレではないだろう。

もっとも主人公がキリストそのものというのはもちろんありえない。ネタバレになるから詳しくは書けないが、「愛」、それも精神ではなく物質的・即物的なそれが核心になっていて、しかも主人公自身はそれに関われない、というあたりずいぶんひねっている。
もっぱら嗅覚によって捕らえられた世界というのは、もっぱら物質そのもの連なりとしてあるのだろう。カニバリズムとも通じるものがあるが、もっと広がりと流動性がある。

製作者で脚色にも参加しているベルント・アイヒンガーは「薔薇の名前」「ネバーエンディングストーリー」(「はてしない物語」)「ブルックリン最終出口」など、映画化不可能な原作を好んで映画化するという妙な嗜好のプロデューサーだが、嗅覚が最大のモチーフになっているストーリーとなると、明らかに不可能性のハードルは高い。
撮影や美術などのスタッフワークの見事さとは別に、全面的な成功にはなりえない。

監督は「ラン・ローラ・ラン」の人だが、あのヒロインは赤毛なのが印象的だったが、今回の被害者の女性たちも赤毛が目立つ。原作がそうなっているのか、監督の趣味か。
(☆☆☆★★)



「葬儀屋月子」

2007年04月05日 | 映画
たまたまyahoo動画に載っていたので見てみたら、これがなかなかイケる。
もったいぶらずそれぞれ3分から4分と短くて、ショート・ショート風にツイストとオチがついて飽きさせない。
モノトーンのヴィジュアルもいい。

主演の及川奈央ってどんな人だろうと調べたら、アダルトビデオのサイトに着いたのでびっくり。別に同姓同名の別人ではない。今では地上波テレビにも出てます。
監督・脚本・編集の山口洋輝という人は、インディーズ・ムービー・サミットの出身らしいが、商業映画も撮れますね。

もともと携帯配信用動画で、それからDVD発売、それからPC配信動画と展開しているらしい。
(☆☆☆)


「蒼き狼 地果て海尽きるまで」

2007年04月04日 | 映画
実は本当の父、あるいは息子ではないのではないか、と疑う男ならではの葛藤が繰り返される。権力争いによる骨肉の争いであると同時に、その反動で信じられぬものを信じようとするテムジンの衝動が武力以上に人を集めていった、という骨格は割としっかりしている。
父子・兄弟との争いを見ていると、なんだか角川春樹その人の姿が自然とだぶってくる。

テムジンが昔、略奪された母の前夫の部族の男(香川照之)を何度も執拗に刀を刺す場面で、思い出すことがあった。
笠原和夫「昭和の劇」で角川映画「天と地と」の脚本の依頼を受けた笠原がシノプシスを作って角川に説明すると、いいけど一つだけ納得できない、上杉謙信が若い頃父親が死んで、その屍に「貴様には負けない」と太刀をぬいてガーンと刺す、という場面をやっちゃいけないと言い出して、これに近いことは史実にあるのだしドラマに必要だからと笠原が説得しても、いやこういうことはやってはいけないのだと意固地になって、結局物別れになった、という。
父親殺しに接近しても、やり通すことはできないのだね。

大量の人馬を動員したスペクタクルは、比較的CGくささが薄くて助かる。ただ、いくさでの戦法の面白さというのがほとんどなくて、辛うじて馬を走らせたまま海老反りになって後方の敵に矢を射掛けるという曲射ちが目立つ程度。
(☆☆☆)



「デジャヴ」

2007年04月03日 | 映画
本来、SFの設定でも持ってこないとありえないくらい荒唐無稽な展開。
人がどうやってか過去に行ってパラドックスおかまいなしで変えまくって、死んでもどこからか生き返りますからね。
爆発の炎の大きさと映像の勢いで押し切れると思っているのか知らないけれど、話と映像は別です。
(☆☆★★★)