prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

チャップリンの秘書は日本人だった~移民が歩んだ波乱の人生~

2008年01月07日 | 映画
一月六日、NHK教育ETV特集にて。
チャップリンの秘書が日本人・高野虎市だったことは有名だし、ポーレット・ゴダートとの絡みで袂を分かつことになったことも知っていたが、チャップリンのもとを離れてからについては、アメリカでの反日気運が高まる中、スパイ容疑で逮捕されたり、強制収容所に入れられたりしたなど初めて知ることが多かった。
俳優のクライド・クサツ(「クワイヤ・ボーイズ」では水野晴郎に似ていると思ったが、今回見ると全然似てない)が日系史の研究家でもあってFBIの資料を出してきたのはちょっとびっくり。

市川獅堂がレポーター役で、場面によっては高野虎市に扮して再現劇を演じてみせる。最初の妻、ミルドレッド・ハリスの浮気現場を押さえに行くところで護衛につかまって脅されたり、上手にチャップリンの女性関係などのトラブルも捌いて見せたというあたり、期せずしてセルフ・パロディになってるみたい。

高野氏も広島出身。初期のアメリカ映画で日本語吹き替え版を作ったら、広島弁になってしまったので日本では字幕が定着したという話がある(清水俊二の著作で読んだ覚えあり)。特に日系アメリカ移民に広島出身者が多いのか、一時はチャップリンの雇い人のほとんどが日本人だったというから、たまたま映画関係者に多かったのか。


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「トニー滝谷」

2008年01月06日 | 映画

離人感、というのか自分を他人のように感じる感覚をよく出している。
全編にわたって原作小説の三人称叙述を朗読して、ときどき成年してからの滝谷がぼそっとひとごとのようにその一部を引き取って独り言として呟く、というスタイル、カメラが横移動していって物陰に入って出て行くとシーンか変わっているといった間のとり方、など、スタイリッシュな統一、空気感の出し方は完璧に近い。

途中、顔と体型のそっくりな別の女を死んだ妻の代わりに雇うというあたり、ヒッチコックの「めまい」みたいな変態映画になるのかと思わせて、再び孤独の中に戻るというあたりが良くも悪くも淡白なところ。
宮沢りえのファッションがそれほど「見せる」要素はないのだけれど、よくできている。
(☆☆☆★)

新年はカラヤンから

2008年01月05日 | Weblog
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

今年の正月のテレビは、不思議と東京MXテレビを見ていることが多かった。
カラヤンの生誕100年記念というので1988年制作のべルリン・フィルのニューイヤー・コンサートをまとめて放映したのと、英グラナダ・テレビ制作、ジェレミー・ブレット主演のシャーロック・ホームズものなど。

カラヤンの番組は華麗にしてとっつきやすい演奏に今更ながら感心し直すとともに、番組のカメラワーク、望遠を多様してオーケストラをピンボケ気味にして睥睨するようなカラヤンの姿を捉え、また団員同士の空間を黒味で塗りつぶし金管楽器類を煌かせた照明、それがまた襟元まで黒のタキシードに身を固め、きれいに銀髪を撫で付けたカラヤンの姿を際立たせるといった調子で、まことにヴィジュアル面からも演出が行き届いているのに感心。


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