曇り、20度、88%
初めてマントを着たのは中学の時です。ベージュ色のマントでした。これ以上私が大きくなりそうにないと母が思ったのか、大人用の服を買ってもらった初めてのものです。試着室で着たとき、とても嬉しかった思い出があります。マントですから、少々太っても痩せても着ることが出来ます。森英恵のものでしたが、当時は大人ものでもウールです。今のようのカシミア混紡などは、本当に高いものでした。なぜか、大学に行く荷物にこのマントは入れませんでした。以来つい最近まで、母が家で普段に着ていました。
次に買ったマントは焦げ茶。私にしては珍しい選択です。これは40代の初めの買い物でした。香港にいると、コートを着る日は一年のうちで、ほんの1週間ほどです。最近は温暖化のせいか2、3日ということすらあります。一重のマントはちょうどいい防寒着です。稲葉賀恵の焦げ茶のマントはカシミアが少し入っていました。荷物を持つのもさほど不自由ではありません。50代を前にして、茶系の服の整理をしました。やっぱり私には似合わない色です。
茶色のマントを手放した頃、手に入れたのがこの黄緑のマントです。写真より、実物はもっと明るい色です。アオガエルの黄緑。これこそ私にとって珍しい色ですが、黄緑は好きな色です。今までのマントの中でも一番ゆっとり作られています。ラルフローレンのもので、一番小さいサイズですが、ちびの私には少し長めです。物を増やすまいと思っていたので、随分迷って買いました。この黄緑のマントを、もっと歳がいって着ようと考えたのです。お婆ちゃんになって、黄緑のマントを着ようと。 小さなフードが付いています。これを被れば、緑頭巾よ、などとお婆ちゃんになった自分を想像します。
この10年ほどの間、着たのは数回。求めて直ぐに、日本に着て帰りました。新宿の駅で息子と待ち合わせています。小さい私はいつも人の中に埋もれて見つけることが困難です。息子に公衆電話のような色のマントを着てるから、と伝えました。それほど明るい黄緑です。
裾丈を少し上げてもらおうと思いながら、数年経ちます。だって、もっと歳がいって着るつもりですからね。ところが、私より背の高い息子のお嫁さんが、着てくれるそうです。色の白い彼女なら、きっとこの黄緑が映えることと思います。
何年か後、緑頭巾を夢見てる私は、返して!と言うかもしれませんね。
大きなショールはなぜか体に馴染みません。同じ一枚仕立てのマントですが、肩がある分納まりよく着られます。洋服は、肩で着るものといわれますが、一番当てはまるのはマントではないでしょうか。