雨、20度、100%
香港、何となく秋らしい風が吹き始めると、気温は高めで半袖なんか着てるのに、どこからともなく焼き栗の匂いがしてきます。ふわっと。
焼き栗の匂いって知ってますか?私が育った、福岡は中國にも近いからでしょうか、天津甘栗と名をうった焼き栗を店頭で売る店がありました。50年以上前のことです。焼き栗屋さんではありません。果物屋の店先です。その頃はまだ華やかだった中洲の電車通りに面したその店は、冬になると焼き栗の機械が出てきます。艶々と黒光する小石と一緒に栗が焼かれています。赤いのぼりが上がっているのも一役買って、いつもその店は暖かそうに見えました。焼き栗が好きな父は必ず一袋買い求めます。遅くまで映画を見た帰り、お外で夕飯を済ました帰りのことでした。そんな匂いに再び巡り会ったのは、ここ香港。
香港の焼き栗屋さん、ちょっと観光の方には見つからない場所で仕事をしています。リヤカーに大きな鉄鍋を乗せて、黒光りする小石と一緒に大きなしゃもじで栗をかき混ぜます。のぼりも、スピーカーで「ロッチー(栗子)」と叫ぶ必要もありません。みんなその匂いを辿ってやってきます。ちょっと中心部を離れた地下鉄の出口、人通りの多いところにリヤカーはやって来ますが、何分にも地元の人のための季節の食物です。
我が家も焼き栗が好きな主人が、仕事の帰り、遠出した帰りに1ポンド、ハトロン紙の紙袋に入れてもって帰ってきます。家に着いてもまだ温々しています。 中國の栗は日本の栗のように立派ではありません。小粒、形もクヌギに似ています。ホッコリという実の感触ではありません。ムッチリして、小粒ながら甘みが詰まっています。主人が一緒の時は、せっせと皮を剥いてくれますので、私はただただ食べるばかりです。ところが、お昼間のおやつには私と この方しかいませんので、仕方なく私が栗をむきます。暖かい時と違って、皮は剥き易くなっています。
気温が下がり始めた香港です。この冬もたくさんの焼き栗をほおばりそうです。