チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

台所の窓

2013年11月06日 | 日々のこと

曇り、22度、85%

 実家を18歳の時に出て以来、一人暮らしの自炊の時も含めて、12カ所の台所を使ってきました。どの台所も充分な広さがあるわけでなく、40年近く前の日本のアパートの台所などなんともこじんまりしたものでした。今振り返ると、その12個の台所全てに窓がありました。

 アパートの外通路に面して窓がある台所、匂いで、そのお宅の夕飯の献立まで解ります。台所に立つ人と目が合えばちょっと会釈を。一人暮らしの時は、そんなに重きがなかった台所、結婚して主婦となった途端に、それこそ私のお城です。起きたら直ぐに台所、寝る直前まで台所。

 自分のために作った台所ではありません。流しの高さ、シンクの大きさ、棚の配置、使い辛い台所も、不思議なことに自分の台所になってくれます。朝、寝ぼけ眼で台所に立っても、体が自然に動いて行きます。だから、今まで使ってきた台所全てが大好きです。

 私の癖ですが、台所で洗いものをしながらよく考え事をしています。楽しいことの時もあれば、今日の予定を考えたり時には気の重い考え事もあります。若い頃は、流しの上で涙をポロポロこぼしたこともありました。大きなため息をつくこともあります。そんな時、窓の外にふと目を遣ると、心がすっと落ち着き、気分を変えることが出来ました。見える景色は12個の台所とも様々でした。緑が生い茂った小さな窓、空しか見えない窓、向こうの建物の別の家の台所が見える窓。見えるものは違っても、外とのつながりを作ってくれる窓です。

 気の重い考え事は、心に沈んで、中に中にと入って行きます。抱え込みそうになる時に、外に目をやれる窓は、重いものを引き出してくれるようです。大きなため息も窓の外へ。

 今の家は、一番永く住んでいます。14年になるでしょうか。ここの台所、窓が2つあります。 ちょっと変形な台所、流しに立つと、奥の窓が左横に位置します。水平に目をやると、見えるのは隣のビルの窓ばかりですが、ちょっと乗り出すと、 下のプールが見えます。夏休みの間はこのマンションの子供の声がプールサイドから上がってきます。この14年間、このふたつの窓にどれだけ助けられたことでしょう。時には、向こうに見える窓の中、私と同じような思いをしてる人がきっといるわよ、と言い聞かせます。素晴らしい眺めではありません。それでも、この窓のおかげで、気持ちを建て直して台所から出ることが出来ます。

 今流行の、オープンタイプの台所はどうも苦手です。対面式などというそうですが、たとえ家族とでも対面して、味見やつまみ食いなどで来ません。お客様などいればもってのほか、手順の悪い私は、テーブルは主人に任せて、台所に籠って次に出すものなどを作っています。お腹はすきますから、自分用に取っておいたものを、口に放り込みながら料理します。台所はやっぱり個室でなきゃね、と思うわけです。それに、対面式だと泣くことも出来ません。小さくても独立して窓のある台所、私のお城です。

コメント (2)
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