晴、7度、53%
お塩を変えると料理の味が変わります。一番よくわかるのがおむすび、真っ白なおむすびは使うお塩一つで、深い甘みが出たり、あっさりした塩味であったり表情を変えてくれます。
毎日焼く小さなフランスパンは、小麦粉とお塩と酵母とお水だけで作ります。とても単純な素材だけにそのどれ一つを取っても微妙に味が変化します。粉の味が一番大きな要因です。3種類ほど常にストックしておき、その日の気分で使い分けます。お水だけは硬度の高いフラン産の水を使います。酵母も起こした種によって味を大きく左右します。もちろんお塩もおむすび同様、味に変化をつけてくれます。
フランスパンですから、フランスの塩と思っていましたが、日本の塩もやはり美味しい。主人が持ち帰ってくれた、南アフリカの大西洋のお塩はこれまた甘みのあるお塩です。フランスのゲラルドのお塩、フランスのカマルグの乾燥したバジルとトマトが入ったお塩、南アフリカの大西洋側の岩塩、沖縄の「青い海」のサラサラなお塩。これもその日の気分で使い分けます。
乾燥したバジルとトマトのお塩を使うとかすかにバジルが香ります。ところどころにトマトのくすんだ赤が顔を出します。ゲラルドのお塩はグレーがかったしっとりとしたお塩で、パンを噛み締めるとその甘みが出てきます。「青い海」のお塩は奥の深い塩味です。初めて使う南アフリカの大西洋のお塩、岩塩でミルに入っています。粒のまま噛むとしばらくして塩の甘みが口に広がりました。まろやかな甘みです。
毎日焼くパンですから、こうして味に変化をつけます。最近のお気に入りはフランスの小麦を使った「トラディショナル フランセーズ」の粉に南アフリカの岩塩を挽いて作った小さなフランスパンです。 「トラディショナルフランセーズ」は黄色に近い粉色をしています。焼き上がりの香りは雑味の少ない小麦の香りです。クラムはしっとりと、外のクラストはパリッと焼き上げます。
小麦がたわわなフランスの田んぼ、塩を作るために海水を引き込んだ大西洋に面した塩田、水はどんな山から汲まれたのかな。パンをこねながら小さな台所で一人想像の旅をします。