曇、4度、74%
台所で使う物は自分の身体の一部に感じます。ザル一つとっても粉を振るう時、麺を茹でる時、野菜の水気を切る時、重ねてあるザルの中からそれぞれに応じて一つ取り上げます。長年の台所仕事から自分なりに役割分担が決まっています。どんなに沢山の仕事をこなす時でも、手が止まることなく仕事を続けられるのはこうした小さな決まり事です。
台所の道具を買い足すことはほとんどありません。お鍋も包丁も十分に持っています。台所のハッチを開ければ整然としまわれています。そういう意味では道具類をよくよく見直すことがなくなりました。どれを取っても私には大事な手の延長です。
入れ子のガラスでできたボールがあります。サイズ違いで3個。しかもブルーの蓋がついています。電子レンジでも冷凍庫にも使える便利なボールです。お菓子を作るときの泡立てたりするボールはステンレスでこれも数持っています。このガラスのボールの中サイズはここ数ヶ月、毎日パン種を発酵させるのに使います。サイズが大きなパンを焼くときは大。先日肉まんの皮タネを発酵させるときは、このボールの大と中が並んで余熱の残ったオーブンに入っていました。
10年近くも前に香港で求めたものです。「パイレックス」の製品です。「パイレックス」も最近では中国製のものが出回っています。つい最近までこの入れ子のボールも中国製だと思っていました。先日、直火にかけれるかどうか裏書きを確かめました。オーブンでは使えますが直火には使えません。その時初めて、アメリカ製のボールだと知りました。10年経った今も蓋の締り具合がピッチリしています。なんとなく頷けました。
ボールのうち2つは香港の主人の元に置いてあります。結婚当初から使っているボールです。卵の泡を立てる時、卵の個数によってボールを使い分けていました。この2つのボールがないので、今は手持ちのボールで工夫します。やれないことはないのですが、ふと香港にあるボールを思い出します。
たかだか台所の道具ですが、よく考えればその一つ一つに助けられています。このガラスのボールは、 3つが一つになって収納できます。仕事ぶりだけでなく、こういう端正さも好きです。