雨、23度、82%
散歩をしていて角を曲がると小さなパン屋さんが見えます。しゃれた作りのパン屋さんが思わない場所にひょっこり建っています。どんなパンを焼いているのか必ず立ち寄ります。店構えが小さくても品数も多く、パンを焼く人の水準の高さを表しているように思います。どのお店もお客さんが絶えません。最近流行りの「食パン」専門店では開店前から行列を見ることもあります。
日本帰国後、この4年間ほぼ毎朝小さなフランスパンを焼いています。フランスパンのために高温まで上がるガスオーブンを備えました。香港時代はスペースの問題で電気オーブンでした。焼きたてのフランスパンの美味しさは格別です。私が日本にいなかった30年の間に大きな変化が小麦粉にありました。以前は日本の小麦から作る強力粉は製パンには不向きでした。それが最近では北海道から九州までそれぞれの土地の小麦粉で製パン用の小麦粉が作られています。その小麦粉を試すのも私の帰国後の楽しみでした。
フランスパン用には「準強力粉」を使います。高価なフランスからの輸入粉まで手に入れることが出来ます。私が使う粉は北海道産のものと日本で精製されたフランスの小麦粉を合わせて作っています。近くスーパーでは売っていないので月1回、デパートの富沢商店で買い求めます。スーパーに並ぶパンの値段と比べると私の焼くパンは高くつくものに違いないと思っていました。
先日入ったパン屋さん、レジに並ぶ人は思い思いのパンをトレーに沢山載せています。小さな子供連れから私年代のご夫婦までパンを食べる人の多さを知ります。その店でふと「パンの値段」を見ました。どの店に行ってもすでに翌日の「パン種」が冷蔵庫に寝ていますから、パンを買うつもりはありません。ですから「パンの値段」を見ることがありませんでした。買っていかれる人、数個のパンに1000円近く払っていました。以来どのパン屋さんを覗いても「パンの値段」を見ます。そして初めて自分のパンが一体いくらで出来ているか計算しました。フランスパンですから、粉と塩と水と酵母です。 この1本でおよそ80円ほどです。「なんだ、そんなに高くないじゃない。」
ずっと贅沢品を食べていると思っていました。焼きたてを食べる贅沢はあります。スーパーのパンよりは少し高いかもしれません。でもなぜかホッとしました。
パンの種を触る喜び、焼ける時の香ばしい香り、こんなおまけまでついて来る家で焼くパンです。パンを焼く喜び、食べる喜び、やはり贅沢品かな。