曇り、25度、87%
義母が入所する施設でコロナ患者が出たのはお盆でした。お盆に入る前に孫たちに合わせることができてよかったと思いました。コロナ患者が出ると、入所者は部屋から出ることができません。食事も自室で取ります。面会禁止の三週間の間、幾度か果物を差し入れましたが、広い食堂に人影はありませんでした。
昨日が面会解禁日でした。桃と庭の花を持って心弾ませて施設に向かいました。食堂の義母の席に後ろ姿が見えていました。「なんだかいつもと違うなぁ?」と義母の顔を覗き込みました。いつもならパッと表情が戻るのに、虚な目をしています。私の胸に不安がよぎりました。義母の車椅子を押して部屋へと向かいました。エレベーターの中で「誰かわかる?」と尋ねたのですが返事がありません。部屋には先日送り届けた、オムツやパッドの箱が積まれています。段ボール箱の山積みは味気ない思いがします。まずは庭のルドベキアを花瓶に刺しました。桃を見せて「食べる?」と聞くとかすかに頷きます。小さく切って、私が義母の口に運びました。自室に連れて行くのは、果物を食べさせたり、主人とLINEで話すためです。LINEの画面に出て来た主人を見ても義母の表情は変わりません。ただ目に映っているだけ、主人が話しかけても返事もしません。以前なら私に何を言っているかという眼差しを向けたのですが、スマホの画面から目を逸らします。
電話を切って、私一人でいろんなことを喋っていました。その時、「花。」と目がルドベキアに向いていました。庭に咲いている様子を話しました。桃は4分の1ほど食べました。「美味しい?」と聞いても返事はありませんでした。昨日は義母のお風呂の日です。わかっていたのですが、面会初日に会いたいとわがままを施設に言いました。お風呂のためにまた階下に連れていきました。「またすぐ来るからね。」
保健師さんが私を見ると、嚥下障害が出て、幾度か吸引をしていると話します。食事をドロドロの状態にするかもしれないとの話でした。吸引が辛いだろうからお任せしますと、施設を後にしました。
車に乗った途端、たった三週間でこんなにも変わるものかと気持ちが沈み込みました。私たちにとってはたった三週間ですが、刺激のない単調な生活の三週間は年老いた者たちにとっては長いのだと思います。言葉、表情、を戻すために足繁く義母を見舞うつもりです。