こんばんわ。今回もすでに終了した(12月19日)展覧会の記事です。ちょうど根津美術館庭園の紅葉が真っ盛りの頃、出掛けた。
根津美術館所蔵の、鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」が、2020年に其一の作品としては初めて、国の重要文化財に指定された。その記念に企画された展覧会である。
本展のテーマが面白い。「夏秋渓流図屏風」が、過去のどのような作品に影響を受け、誕生したのか探るというのである。撮影禁止だったが、ちらしに、それらの作品の写真が載っているので、ここに再現したいと思う。
まず、其一の「夏秋渓流図屏風」。
右隻
左隻
ヒノキ林に群青色の渓流。右隻はヤマユリの咲き誇る夏の景、左隻は桜紅葉の秋の景。単純化されたクマザサ、増殖するようなコケ、真横向きにとまるセミなど、一見写実的な描写に非現実的な感覚がにじみでているという専門家の評。
鈴木其一は師の酒井抱一と並ぶ江戸琳派を代表する画家。一番、影響を受けたと思われるのは、誰が考えても抱一。本展では抱一のこの屏風を挙げた。たしかに、其一の作品?と勘違いすような色彩や形が基一似(笑)。後期展では、重文の名作、夏秋草図屏風(東博蔵)が展示されるが、この青楓朱楓図屏風の方がなるほどと思う。
青楓朱楓図屏風(個人蔵)(酒井抱一)
そして、円山応挙の絶筆とされる重文・保津川図屏風(株式会社千總蔵 )。たしかに渓流が流れる様は似ているが、素人目にはとくに影響を受けたとは思えないが。でも基一がこの絵を見て、インスピレーションが湧いたかもしれない。
一方、江戸時代(17,8世紀)に描かれたという、山本素軒の花木渓流図屏風。これは、青い渓流と緑の苔山、構図はもう真似したとしか思えないほどよく似ている。”模倣は創造の母”といわれるが、其一もこれらの作品を模倣しつつ、其一独自の境地に入っていったのだろうか。
基一の光琳のオマージュ作品も展示されている。三十六歌仙・檜図屏風。
とても面白い展覧会だった。庭園では見事な紅葉と、あの日は素晴らしい一日だった。
では、おやすみなさい。
いい夢を。
(師走の立待月)