気ままに

大船での気ままな生活日誌

鈴木其一・夏秋渓流図屏風

2021-12-21 20:08:10 | Weblog

こんばんわ。今回もすでに終了した(12月19日)展覧会の記事です。ちょうど根津美術館庭園の紅葉が真っ盛りの頃、出掛けた。

根津美術館所蔵の、鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」が、2020年に其一の作品としては初めて、国の重要文化財に指定された。その記念に企画された展覧会である。

本展のテーマが面白い。「夏秋渓流図屏風」が、過去のどのような作品に影響を受け、誕生したのか探るというのである。撮影禁止だったが、ちらしに、それらの作品の写真が載っているので、ここに再現したいと思う。

まず、其一の「夏秋渓流図屏風」。

右隻

左隻

ヒノキ林に群青色の渓流。右隻はヤマユリの咲き誇る夏の景、左隻は桜紅葉の秋の景。単純化されたクマザサ、増殖するようなコケ、真横向きにとまるセミなど、一見写実的な描写に非現実的な感覚がにじみでているという専門家の評。

鈴木其一は師の酒井抱一と並ぶ江戸琳派を代表する画家。一番、影響を受けたと思われるのは、誰が考えても抱一。本展では抱一のこの屏風を挙げた。たしかに、其一の作品?と勘違いすような色彩や形が基一似(笑)。後期展では、重文の名作、夏秋草図屏風(東博蔵)が展示されるが、この青楓朱楓図屏風の方がなるほどと思う。

青楓朱楓図屏風(個人蔵)(酒井抱一)

そして、円山応挙の絶筆とされる重文・保津川図屏風(株式会社千總蔵 )。たしかに渓流が流れる様は似ているが、素人目にはとくに影響を受けたとは思えないが。でも基一がこの絵を見て、インスピレーションが湧いたかもしれない。

一方、江戸時代(17,8世紀)に描かれたという、山本素軒の花木渓流図屏風。これは、青い渓流と緑の苔山、構図はもう真似したとしか思えないほどよく似ている。”模倣は創造の母”といわれるが、其一もこれらの作品を模倣しつつ、其一独自の境地に入っていったのだろうか。

基一の光琳のオマージュ作品も展示されている。三十六歌仙・檜図屏風。

とても面白い展覧会だった。庭園では見事な紅葉と、あの日は素晴らしい一日だった。

では、おやすみなさい。

いい夢を。

(師走の立待月)

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思い込み

2021-12-21 08:27:51 | Weblog

おはようございます。

1週間ほど前、浄智寺界隈のもみじ道というテーマで記事を書いた。そのとき、この辺りに小津安二郎監督と日本画家、小倉遊亀が住んでいたことも記した。しかし、その居住場所は特定できていなかった。ある程度、情報があったにもかかわらず、こちらに越してきてから17年近くになるというのに不明のままだった。

それが、昨日の北鎌倉散歩で、ひょんなことから、旧居跡を特定できたのだ。実はずっとある思い込みをしていた。浄智寺から源氏山に向かう道沿いにあることは間違いないのだが、左手は山が迫っていて平地も狭く、住宅はポツリポツリといくつもない。一方、右手側には風情ある由緒ありそうな家が並び、こちら側だとずっと思い込んでいた。そして、(結局、それは間違いだったのだが)ある脇道の入り口が小倉遊亀旧居で、その奥に(通行止めになっているけれど)小津旧居があると思い込んでいた。

ひょっとして、山側かもしれないと、ふと思いつき、注意深く、浄智寺の横の道を登った。竹塀側が浄智寺で、そのあと、住宅(一部見えている)がつづく。左が山側で平地がほとんどなく家もない。

浄智寺の竹塀を過ぎたところから、右側に住宅がつづく。さて、その左側に、一軒、竹塀に囲まれた場所がある。家屋はないのだが古い門だけがある。

そして、表札がかかっているので、見ると”小倉”とあるではないか!

これだけでは決め手にならない。右側が大きく開いていたので、廻ってみた。空き地というか、駐車場になっていた。かってはここに小倉邸があったのだろう。そして、山側に、写真で見慣れた隧道がある。思わず、心の中で万歳を叫んだ。間違いない!この隧道の奥に小津安二郎が60歳で亡くなるまで過ごした家があるのだ。隧道は通行止めで、その向こうの様子はうかがい知れないが、山に囲まれたステキな場所なのだろう。小津安二郎が選んだ住宅だもの。

17年もかかったか、と苦笑した。思い込みというものからは、なかなか、抜け出せないものだ、とつくづく思い知った。

先週のブログにも、この門の紅葉を撮って、載せている。一昨年のにも入っていた。(笑)来年からは、旧小倉遊亀邸の紅葉と説明書きを入れねば。

2020年12月15日、知らずに撮っている↓

浄智寺境内の紅葉は終盤に入っていた。

ぽつんと烏瓜がひとつ。まるで小津映画の一シーンのようだった。

小津安二郎といえば、赤が大好き。初めてのカラー映画作品となった”彼岸花”にはふんだんに赤が使われていた。とくに茶の間に”出演する”あの赤いヤカンは有名。場面が変わって、物理的に在るはずのない位置に(目立つように)動いていたという話もあるほど赤にこだわった。

小津安二郎旧蔵「赤いヤカン」映画「彼岸花」のため探してきた ...

遊亀の径(こみち)

小倉遊亀|絵画の買取・鑑定相談・相続査定なら花田美術

今朝の富士山と十六夜の月の朝帰り。

それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!

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