東電、作業員に危険伝えず
「6日前に知っていた」
「被ばく防げた」と謝罪 福島原発
東日本大震災で被災し、深刻な状況が続く東京電力福島第1原発(大熊町、双葉町)3号機のタービン建屋地下の水たまりで24日に作業員3人が被ば くした問題で、東電は26日、18日に他の号機のタービン建屋地下で水たまりを見つけ、高い放射線量を検出していたのに、現場の作業員に知らせていなかっ たことを明らかにしました。東電は、「しっかりと注意喚起していたら、今回の被ばくは防げた」と謝罪しました。
18日に高い放射線量が検出されたのは2号機のタービン建屋地下。東電社員と関連企業の作業員の計2人が原子炉などに真水を送るための復水移送ポ ンプ(補給水系)の点検作業を行った際、個人線量計の数値が約5分間で50ミリシーベルトに達したため、作業を中断して退避しました。この際、水たまりが あったといいます。
午前中の会見では、1号機と発表していましたが、夕方の会見で2号機だったと訂正。さらに、25日に、1号機タービン建屋地下1階の水たまり表面 で1時間当たり約200ミリシーベルトの放射線量を検出したと発表したのは約60ミリシーベルトの間違いだったと訂正しました。東電の発表そのものの信 ぴょう性が疑われる右往左往ぶりに批判が高まっています。
東電によると、1号機タービン建屋地下の水たまりの水にも、運転中の原子炉の水の1万倍に相当する放射能が含まれていました。東電が分析した結 果、放射性物質の塩素38、ヒ素74、イットリウム91、ヨウ素131、セシウム134、同136、同137、ランタン140が検出されました。放射能の 濃度は水1立方センチ当たり約380万ベクレルで、3号機と同レベルでした。
タービン建屋地下に水がたまっている状態はこれまで1~4号機で確認されており、1号機では深さが最大40センチ、2号機は深さが最大1メートルあるといいます。
東電は26日、タービン建屋地下にたまった水の排出作業に着手。1号機ではポンプを使用し、同じタービン建屋内の別の場所に移し始めました。ま た、1、3号機に続いて2号機でも、消防ポンプによる原子炉への真水を注入。真水には核分裂反応を抑えるホウ酸を混入、2号機の中央制御室も26日、照明 が点灯しました。
作業員被ばくの汚水漏れ
配管・燃料損傷が原因か
福島第1原発3号機のタービン建屋地下1階でケーブル敷設中だった3人の作業員が被ばくした問題で、経済産業省原子力安全・保安院は、タービン建 屋の地下にたまっていた水は、3号機の原子炉から漏れ出した可能性があるとの見方を示しました。一方で、圧力変化などから原子炉容器に破損が生じている恐 れはないとしています。
それでは、どんな経路で原子炉の水が漏れ出したのでしょうか。元日本原子力研究所職員で、研究用原子炉の運転経験がある出井義男さんは、想像の範 囲と断りながらも「原子炉からタービンに蒸気を送る配管や注水するための配管などの系統に、損傷などのなんらかの異常が生じて漏れ出たとしか思えない」と いいます。
たまっていた水からは、放射性物質のコバルト60、テクネチウム99m、ヨウ素131、セシウム134、同136、同137、バリウム140、ラ ンタン140、セリウム144の9種類が検出されました。このことが、原子炉から漏れ出した可能性があるとの見方の根拠となっています。
元中央大学教授で核燃料化学が専門の舘野淳さんは、揮発性のヨウ素やセシウム以外の放射性物質が検出されたことに注目し、次のように話します。
「揮発性の放射性物質は核燃料棒の被覆管が損傷しただけで出てきますが、セリウムなどは燃料自体が破損するような状態でないと出てきません。原子炉内の核燃料は損傷が相当進んでいると考えられます」