みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

『マンガはなぜ規制されるのか-「有害」をめぐる半世紀の攻防』(長岡義幸著)/新聞社説ほか

2010-12-15 10:02:19 | 「ジェンダー図書排除」事件
午後から「女ぎらいの会」です。
今回から『女ぎらい ニッホンのミソジニー』を読んでいきます。
わたしは第2章を担当しているので、もう一度読みなおしています。

つれあいの12月議会での一般質問も、今日の午後なんだけど、
バッティングしているので、残念ながら傍聴に行けません。

でかける前に、今日のブログをアップ。
昨日の東京都の図書排除条例の続きです。

東京都青少年健全育成条例改正問題:
「表現の自由を規制する青少年健全育成条例改正に反対します!」 (2010-12-14)


改正条例案はきょうの午後、都議会本会議で可決されるという状況のなか、
けさの中日新聞の社説は「漫画性描写規制 慎重な運用を心掛けよ」。

【社説】漫画性描写規制 慎重な運用を心掛けよ
2010年12月15日 中日新聞 

 過激な性描写のある漫画などの販売を規制する東京都の条例改正案が成立する見通しだ。恣意(しい)的な規制を心配する声は根強い。「表現の自由」にかかわる改正だけに十分に慎重な運用を求めたい。
 今の議会で審議されているのは、六月議会で否決された都の青少年健全育成条例改正案が手直しされたものだ。規制対象は「法に触れる性行為や近親者間の性行為を不当に賛美したり、誇張したりして描いているもの」とされる。
 そうした漫画やアニメの作品は成人コーナーに並べて子どもに売ったり、見せたりしないよう事業者に自主規制を求めている。そこから漏れた作品があれば、描写の中身によって「不健全図書」に指定して成人コーナーに置き、子どもの手が届かないようにする。
 漫画家や出版社、法律家などは「行政の都合の良いように解釈され、創作活動を萎縮させる」と反発している。条文には「不当に賛美・誇張する」といった曖昧な文言が盛り込まれている。恣意的な運用を恐れるのもうなずける。
 角川書店や講談社などの出版大手は、来年三月の「東京国際アニメフェア2011」への参加を取りやめる声明を出した。漫画家らの現場と話し合いをしないまま規制に踏み切った都の姿勢は、強い怒りと不信感を招いたようだ。
 子どもの性的感情を刺激したり、残虐性を助長したり、自殺や犯罪を誘発する作品は今の条例でとうに販売を制限されている。改正案は屋上屋を架すにすぎず、行政が介入する余地を広げるだけだという指摘が出ている。
 確かに、親によっては子どもが性行為をまねたり、性意識がゆがめられたりしないかと不安にかられるような作品は多く売られている。子どもから遠ざけておきたいと願う親心は分からなくはない。
 だが、子どもへの悪影響が心配される作品が野放しになっているとしても、本来は事業者が流通や販売の在り方を自主的に考えるのが筋だ。地域や学校、家庭で大人と子どもが性の問題について話し合うといった教育上の取り組みも併せて進められていい。
 「表現の自由」にかかわる規制だ。改正条例の運用は、反対の声を忘れず、できるだけ慎重でなくてはならない。流通や販売が抑圧され漫画家らの内心が縮こまっては、日本が誇る漫画やアニメの発展の足を引っ張ることになりかねない。事業者は引き続き、都との議論を深めてほしい。


菅首相も「ブログで都条例に言及」との情報もあります。

菅首相、ブログで都条例に言及 「アニメフェアが東京で開催できない事態にならないよう努力を」(2010年12月14日 ITmedia )

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先週の朝日新聞書評欄と、今週の日曜日の中日新聞にこの問題を取り上げた本の紹介。

   『マンガはなぜ規制されるのか』
問題の経緯をさかのぼる
   
   2010.12.12 中日新聞


マンガはなぜ規制されるのか [著]長岡義幸
[掲載]2010年12月5日 朝日新聞

 「青少年の健全育成のために」表現の規制を迫る動きとの攻防を、1950年代の悪書追放運動から最近の東京都条例改定案まで振り返る。法で道徳を導こうとする秩序意識や、権利主体ではなく保護・育成対象という子ども観を指摘し、議論の土台を整理する。 
マンガはなぜ規制されるのか - 「有害」をめぐる半世紀の攻防 (平凡社新書)
著者:長岡 義幸
出版社:平凡社  価格:¥ 819 


さっそく買ってきて読みました。

   マンガはなぜ規制されるのか-「有害」をめぐる半世紀の攻防
   (長岡義幸著/平凡社新書/2010/11/16)

   

前半は「マンガ規制の歴史」、最終章は「マンガ規制は何を意味しているか」。
今回の条例改正の問題点がよく分かります。
「マンガ規制の歴史」の最後には、堺市立図書館でのBL図書排除事件のことがとりあげられています。
P238には、上野さんとわたしの名前も出てきます。
「堺市にいち早く抗議し、方針転換を実現する主要な役割を担ったのは、福井県で起きた「ジェンダー図書排除」を究明するグループの事務局を務める寺町みどりと、東京大学教授の上野千鶴子だった。・・・」


 都青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 漫画家・野上武志さんに聞く

13日の東京都議会総務委員会で可決された青少年健全育成条例改正案。都は「どんな漫画も描くのは自由」と強調するが、漫画家たちは「事実上の表現規制になる」と反論する。「過激な漫画」の現場から売れっ子を目指す漫画家の一人に話を聞いた。【真野森作】

 ◇豊かな文化生まれない 事実上の規制…怖くて描けなくなる
 「私たち漫画家のほとんどが個人事業者。そのうえ世間が相手の商売なので、風当たりには敏感。面倒な規制ができると、引っかかるのが怖くて規制のずっと手前で描けなくなってしまう。すでに萎縮し始めている仲間もいる」。20代後半でデビューした野上武志さん(37)は硬い表情で口を開いた。東京都練馬区内のマンションに自宅兼仕事場を置き、お色気とミリタリー物を掛け合わせたジャンルの作品を月刊誌で連載している。
 現行の都条例は、性交を露骨に描いた「著しく性的感情を刺激」する漫画を18歳未満に売ることを禁じる。だが改正案は、描写がそこまででなくても、強姦など「刑罰法規に触れる性的行為」を「不当に賛美したり、誇張して」描いた作品を規制対象とする。民法が婚姻を禁じる近親間の性交も描き方によってはご法度だ。
 漫画家からすれば、新たな規制の網がどこまで及ぶのかわかりにくく、不安がぬぐえないという。誰でも買える一般漫画として出版したのに、後から「不健全図書」(成人漫画相当)に指定されると、出版社は成人マークをつけてビニール包装した上で、成人コーナーでしか販売できなくなる。コスト増や販路が限定されることで、絶版に至ることもありうる。一方、最初から成人漫画として販売すると、読者層はかなり限定される。
 野上さんは「立場が不安定な新人は、(不健全図書指定など)一度のトラブルが命取り。挑戦の場が狭まってしまう」と危惧している。
 野上さんは大学卒業後に会社勤めをしていたが、転身を決意。働きながら作品を描きためるうち、出版社から声がかかった。プロ第1作は「エロ」が売り物の成人漫画。このジャンルについて「常に新しいものを求められるカオスのようで、だからこそ新人がデビューしやすい。ごった煮の中から新しい表現手法が生まれてくる」と説明する。野上さんの連載の一つは、各国の戦車をセクシーな女性キャラクターとの抱き合わせで紹介し、ミリタリーの世界をとっつきやすくしているのが特徴だ。
 漫画の表現を巡る「タブー」は性だけに限らない。近現代史が好きな野上さんは、日中戦争を正面から描く構想を温めているが、政治的な攻撃を恐れて出版社はどこも難色を示すという。「タブーにぎりぎりまで挑み、人の欲求を描くのが漫画。大人の一員として、子どもに見せたくない作品への対策を社会全体で考えることには協力したい。けれど、『お上任せ』のシステムの下では豊かな文化は生まれない」。野上さんは強調した。
毎日新聞 2010年12月14日
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都青少年健全育成条例改正案:都議会委可決 付帯決議で慎重運用要求 /東京

 ◇「漫画、十分吟味を」
 書店の一般書棚で販売できる漫画は縮小へ。13日の都議会総務委員会で可決された青少年健全育成条例の改正案。6月議会で前回案に反対した民主も、今回は「強姦(ごうかん)や児童買春を不当に賛美して描く図書類を青少年が容易に読める状況は良くない」と賛成に転じた。今後は、慎重な運用を求める付帯決議の趣旨を、都側がどれだけ尊重するかが注目される。
 委員会では民主の小山有彦都議が会派を代表して意見表明し、改正案に理解を示した。1冊ごとに自主規制団体の意見を聞き、審議会で不健全図書を決める現行制度について、「客観性が担保されている」と評価。規制強化への出版関係者の懸念を踏まえ、(1)審議会委員が内容を吟味できるよう、対象漫画本を委員に事前配布する(2)審議会の公開--を都に要求した。
 共産と生活者ネットワークの両会派は、改正反対の立場で意見を述べた。共産の吉田信夫都議は「自主規制の努力があり、現状は野放し状態ではない。表現規制拡大の危険をはらむ」と批判した。
 付帯決議は「創作した者が作品に表現した芸術性、社会性、学術性、諧謔(かいぎゃく)的批判性等の趣旨を酌み取り、慎重に運用すること」「審議会の諮問にあたっては、検討時間の確保など適正な運用に努めること」などとしている。改正案に反対する請願2件、陳情330件は全て不採択となった。【真野森作】
毎日新聞 2010年12月14日


社説:漫画と都条例 「過激」に乗じて規制か(12月15日) 

 東京都が、過激な性描写のある漫画などを子供に売れないように青少年健全育成条例2件を改定する。15日の都議会本会議で可決、成立する流れだ。
 行政が青少年育成の環境を整えるのは当然だが、出版物の販売禁止にまで踏み込むのは乱暴すぎないか。しかもその基準は曖昧だ。
 作家や書店の萎縮が心配だ。さらに、拡大解釈で表現や出版の自由が侵されないか大きな懸念がある。
 作家の多くが集中している東京都で独自の規制を行えば、一自治体にとどまらない影響が及ぶだろう。
 現行条例でも対応はできる。改定は見送るべきだ。都議会の最終結論をしっかり見届けたい。もし成立するなら、拡大運用がなされないよう、不断に監視する必要がある。
 条例案では、漫画やアニメに登場する人物の架空の行為を法などで判断し、販売の自主規制を求め、悪質なものは販売を禁止できる。
 規制されるのは、残虐性を助長し、自殺や犯罪を誘発するもののほか、「法に触れる」「近親者間」などの性的な行為を不当に賛美し、誇張するように描写・表現したもの。
 このうち強姦(ごうかん)など「著しく」社会規範に反する行為を「著しく不当に」賛美するものは販売禁止となる。
 また条例の所管は、警察幹部OBがトップを務め警察庁出向者もいる都の青少年・治安対策本部。表現や文化ではなく、取り締まりに重点が置かれていることを裏付ける。
 漫画の世界では、性的な表現がエスカレートしているとされる。保護者が、子供たちをそうした出版物から遠ざけたいと考えるのは自然なことだ。
 しかし、行政が販売可否の線引きをするのは別問題だ。出版界や作家が強く反発しているのも当然だ。
 出版界だけではない。日弁連や日本ペンクラブは反対声明を出した。日本図書館協会も、慎重な対応を求める要請を行っている。
 同様の条例案は6月議会で一度否決されている。都議会はあらためて改定の重大さを自覚すべきだ。
 とりわけ、今回一転して賛成する民主党の責任は重い。13日に可決した総務委員会は、慎重な運用を求める付帯決議も行ったが、法的拘束力はない。
 子供にどんな漫画がよいか、どんな情報が役に立つかは、多様な情報に触れる中で家庭や地域社会が学ばせ、子供自身が学ぶことだ。戦前の言論統制が、わかりやすい漫画本などの規制から始まったという歴史にも思いを致す必要がある。
 一部の漫画に対する素朴な嫌悪感が、最も大切な自由を差し出すことにならないとは限らない。
2010.12.15 北海道新聞 


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12月14日(火)のつぶやき

2010-12-15 01:26:47 | 花/美しいもの
14:11 from Tweet Button
東京都青少年健全育成条例改正問題:「表現の自由を規制する青少年健全育成条例改正に反対します。」  #goo_midorinet002 http://t.co/ocm2VTX
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