みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

<憲法と家族 参院選2013>(上) 生活保護/(下) 保育

2013-07-11 21:41:13 | ほん/新聞/ニュース
二日間留守にして帰ってきて、
たまっていた新聞を開いて読みました。

まずは中日新聞の生活面から。

なんと<憲法と家族 参院選2013>の連載の最後に、
(この連載は白井康彦、稲熊美樹が担当しました)との記載。

白井さんと稲熊さんがコンビを組んで、記事を書いていらっしゃったのです。
(上)を探したら、昨日の中日新聞でした。
岐阜支社にみえた友人のお二人の名前が並ぶのは
うれしいかぎりです。

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 <憲法と家族 参院選2013>(上) 生活保護  
2013年7月10日 中日新聞

 二十一日投開票の参院選では、さまざまなテーマが議論されている。憲法をどうするかも争点の一つ。改憲を目指す自民党の憲法草案には、家族の在り方などに関する規定も盛り込まれている。家族と憲法の関わりを、それぞれの現場から考えた。

 自民党が昨年公表した改憲草案。第二四条に「家族は、互いに助け合わなければならない」という条文が新設された。家族の絆が薄れてきたことを考慮したという。だが、困ったときに身内で面倒を見合うことで、社会保障費を減らしたいという思いも透けて見える。

 昨年春、高収入のお笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことが明るみに出た。多くの人が「なぜ親を援助しなかったのか」と批判したのは、記憶に新しい。

 “憲法二四条”の考えと重なるような動きは既にある。先の通常国会に提出された生活保護法改正案。受給者の家族の扶養義務を厳しくとらえ直した=メモ参照。いったん廃案となったが、秋の臨時国会に再提出される見通しだ。

    ◇
 東海地方に住む四十代の女性受給者は「(生活保護を受ける)こういう生き方しかない、という人生があることを分かってほしい」と訴える。

 女性と夫は精神障害者。女性は以前、精神障害に理解がある会社で働いていたが、その会社が倒産した。今は生活保護が命綱だ。「保護を受けたことで親族を含め、いろいろな人から嫌みを言われた。そのたびに胸が張り裂けそうでした」と振り返る。

 数年前までは、自治体の福祉事務所で担当者が「親きょうだいに養ってもらえ」などと生活保護の相談に来た人を追い返す事例が目立った。二〇〇六年、北九州市門司区の五十代の男性が餓死した事件は、福祉事務所の担当者が「子どもに養ってもらえ」と申請を拒絶したのが原因だった。

 日本は欧米に比べ、生活保護受給者の恥や負い目の感情が強い。「家族に迷惑をかけたくない」という気持ちから、申請をためらう人が増える可能性がある。

 今年五月、国連の社会権規約委員会は日本政府に勧告を出した。その中に次のくだりがある。「スティグマ(恥や負い目の感情)のために高齢者が生活保護の申請を抑制されていることを懸念する」

 その一方で「保護を受ける前に家族で助け合うのは当然」という声もある。長い不況の影響もあって、生活保護費は増え続け、二〇一二年度で三兆七千億円。家族の助け合いが多くなれば、その分、国の負担は減る。

 中部地方のある男性建築士(69)は「家計に余裕のない人も多いが、家族ができる限り援助するのは人間として当然だろう」という。

 生活保護問題に詳しい司法書士の水谷英二さん(55)=名古屋市=は「家族の助け合いは当然のことのようだが、それを法制度に結びつけていいのかどうか。生活保護を受けられるのに受けていない人も多い。そうした実情も踏まえて議論するべきだ」と話している。

 <生活保護法改正案中の家族の扶養義務強化の部分> 親や兄弟などの扶養義務者が扶養義務を果たしていないなどと判断した場合、自治体は(1)扶養義務者に書面で通知する(2)扶養義務者などに報告を求める(3)金融機関や勤め先などに資料の提供を求める-といったことが可能になる。受給申請者や扶養義務者の側は、金融機関や勤め先まで洗いざらい調べられる可能性があることが心理的な圧迫要因になる。


  <憲法と家族 参院選2013>(下) 保育  
2013年7月11日 中日新聞

 中部地方の公立認可保育所。照り付ける日差しの下、庭のプールで子どもたちが歓声を上げる。園長は「保育所は、子どもたちのセーフティーネットなのです」と力を込める。

 この保育所のあるクラスの保護者の収入は、ほとんどが年間二百万円に満たない。朝食抜きで登園する子もいる。でも、保育所では、みんな平等だ。

 給食でおなかを満たし、友達と遊び、笑い合って心を満たす。保育所にいる間は、今の憲法二五条にある「健康で文化的な」暮らしが約束され、安心して過ごすことができる。

 認可保育所には最近、経済的に苦しい家庭を支援する役割も期待されている。園長は「貧困家庭は、忘れ物が多いなど親の生活能力が低い場合も少なくない。保育所にいるうちに自立できるようになってほしい」と願い、親の支援にも力を入れる。

 子どもの権利に詳しい愛知県立大の望月彰教授(教育学)は「親の就労と、子どもの健全な発育の両方の権利を保障するのが保育所」と解説。憲法に直接の規定はないが「子どもたちには『保育を受ける権利』がある」という。

 自民党は改憲草案に「家族は、互いに助け合わなければならない」という条文を新設した。これが実現すると、保育所など社会として子どもや親を支える仕組みが弱くなるのではないか、と危ぶむ声が出ている。

 保育制度に詳しい川口創弁護士=名古屋市=は「第一義的には親が扶養する」と指摘する。その一方で「親だけで完結するわけではない。(改憲草案は)子育ての自己責任を強要することになる」と警鐘を鳴らす。

 子どもが虐待されている家庭のサポートも、保育所の重要な役割だ。ある児童相談所の職員は「施設に入所させて親子を切り離すほどではなくても、見守りが必要な場合、保育所が必要」と力を込める。

 しかし、認可保育所に入りたくても入れない「待機児童」が出るほどで、保育所の定員には余裕がない。職員は「年度途中になると、入所させたい子がいても調整が大変」と話す。

 何かしら困難を抱えた家庭の場合、保育所が自宅から近いことは重要な条件。自転車や自動車を持てない家庭もある。別の公立保育所の園長によると「保護者の気力が低下していて、子どもの送り迎えができないこともある」。育児放棄の家庭に子どもを迎えに行くこともあったが、「近かったからできた」という。

 足の踏み場もないほど散らかった家から、子どもを保育所へ連れていき、水浴びの後、清潔な服に着替える。「保育所なら、子どもたちを守れる」という。

 虐待などで児童相談所に保護される子どもの数は増える傾向にあり、乳児院などの入所施設は満員になる場合もある。入所施設にも保育所にも入れなければ、ヘルパーらが個別に訪問するが、毎日とはいかない。

 家族が助け合うことは、もちろん大切。でも、複雑な事情を抱えた家庭もあり、家族だけで解決できない現実がある。

 寺町東子弁護士=東京都=は「家族での扶助を基本とすると、子ども一人一人に対する国の責任が曖昧になってしまう」と指摘する。
 (この連載は白井康彦、稲熊美樹が担当しました)


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