
仮設テントで、サーカス?!
あんまり気が乗らなかったが、流れで行った。
私は、いつもこのパターンが多い。
スロー・スターター。
予備知識ゼロ、思い込みや先入観のみ。
そして大概は、興奮のるつぼと化す。
今回のコルテオも、まさにそうだった。
大阪・中之島の、なんだかよくわからない場所に、突如現れる巨大テント。
一旦入場すると、再入場はできないという。
トイレは、あるのか?? テントって、蒸し返してない?
不安が募る。
席に着くと休憩までは移動できないらしいので、とりあえずトイレへ。
皆さん、考えることは同じ。
トイレは長蛇の、本当に長々と長蛇の列。
「コルテオ」とは、イタリア語で「行列」の意味らしいが、まさに、序盤からコルテオはスタートしてる。
こんな列では、始まるまでに、半分ぐらいの人しか、利用できないのではないかと、
諦めていたが、まあなんと、さっさ、さっさと、じゃんじゃん、はけていく。
女性用だけでも、20ぐらいあるのではないだろうか。
すべて洋式、水洗、清潔。
印象は、よい。とりあえずは、大事なことはクリアできて、よかった・・・
肝心の内容に行きつくまでに、こんなに文字数を費やしてしまった。
本当に言いたかったのは、ここからで、いままでは、ほんの前振り。
入り口にも達しない。(まさに文字通り)




なにしろ、感動、感激、素晴らしかった。
フィギアスケートや、シンクロナイズドスイミングに、
技術点以外に、芸術点をつける、という意味がよく理解できた。
最近、2度ばかり、上海で、上海雑技団のショーを見た。
主に観客は、外国人だった。
観光の目玉のひとつにもなっているのだろう。
それはそれで卓越していたが、高い技術もさることながら、テイスト&舞台スケールが全く違った。
お国柄だろうか。
舞台の大きさ、形状、演出の創意工夫も影響している。
コルテオは、カナダのシルク・ドゥ・ソレイユによるもの。
ミュージカル仕立てになっていて、ストーリー展開に、音楽に、身が踊る。
特にラテン系音楽は、脳を通り越して、BODY&SOULをじかに揺さぶるものがある。
出演者が欧州の古風な衣装を纏っていたこともあるだろうが、音響や視覚から、
私の記憶にまだ瑞々しさが残る、ロシアでのバレエ、ウィーンやパリでの演奏会、
ベトナムでの水上人形劇、日本上陸のウィーン制作ミュージカル、
あれこれ、現地で見聞きした、その地で培われた芸術ティストが、
頭の中で、次から次へと蘇ってきた。
近い将来、ボケたら頭の中でこんがらがって、整理が大変そう・・・
だが、今回は、導入時のイメージ・バリエーション・アップ効果をもたらしてくれた。
しかし、初めてのコルテオ。五感で感じた。
アクロバットをはじめとする高度な技には、溜息、惜しみない拍手、
最初から最後まで、身を乗り出したまま。
終盤あたりになると、自分が時の権力者(チンギス・ハーンか、クフ王か、アレキサンダー大王か、
はたまたナポレオンか、エカチェリーナ2世か、秀吉か)になった図が頭に浮かんだ。
「殿、いかがでしょう? 世界中から、ツワモノ美集団を集めましたが」
と家来に耳元でささやかれているような、しびれ。
「あう、おう、見事じゃ!」
脳内アドレナリンは、MAXに到達していた。
3000席、幅約17m、高さ12mの巨大な絵画のカーテン。
劇場を横断する32mのステージ、それを挟む対面式の客席は、
音響や、舞台美術の視覚効果と相まって、
今まで見たことのない、エキサイティングな究極の空間を生み出していた。
エンターテイメントというには、あまりにも高い芸術性。
人間業とは思えないような、テクニックを超えたスリリングな動きに、息つく暇もない。
バランスのとれた肉体美、機能美、躍動美、その鍛錬の蓄積、緊張の連続に、
本当に感動した。
掌が痛くなるほど拍手をした。
小難しい論評を書かれる批評家や、一般の目の肥えた方々からの酷評もあるようだが、
私は、少々の難点には目をつぶる。
楽しかったことをことさらクローズアップして、脳裏に焼き付ける。
単純で、なんでもかんでも感激する、脳に響くジャッジ点数が低いのかも知れないが、
それも、神様からのプレゼントだと思っている。
いくら、お偉い諸センセイ方のように、いろんなコトをよく知った上で論評したところで、
こういうのは、楽しんだモノの勝ち。
一期一会の瞬間を、プラス・モードで感じ取る。
一般大衆民の強み。
生きててよかった。
大阪のあんなところまで、ホイホイ足を運べる自分が嬉しかった。
元気で、いよう。
また、ワクワクする楽しいことに出会えますように・・・
天国へ行く時のために準備している荷物の中に、
グッズショップで購入したコルテオのクリア・ファイルをそっと忍ばせた。
