宗家である尾上菊五郎氏、そのご子息の五代目 尾上菊之助氏も演じられた。
富司純子さんも、応援にかけつけていた。
純子さん、それはそれは美しかった。
紫のお着物を召されていて、美のオーラ。華奢なカラダから放つ迫力。
どの角度から見ても完璧。女優さんはスゴイ。
息子さんも当然整った美形。そして、軽やかで美しい舞。
菊五郎氏は、家元と競演されていたが、家元の女形の舞に目を奪われて、踊りがよく把握できなかった。
私の、日本舞踊、ど素人の浅はかさ、ゆえ。
で、肝心の叔母の踊りも、この発表会が人生最後というだけあって、気迫があった。
何度も衣装の早変わりをしたり、
三味線や小鼓、笛、長唄など、何人もの演者が奏でる、邦楽の調べが生で流れる
本格的な舞台に、日本の伝統美を感じることができた。
ポーズ、しぐさ、出で立ちの一つ一つを見ていると、日本画(美人画)を鑑賞している錯覚に陥った。
踊りの後、打ち上げ会が開かれるのにあたり、人数の制限もあり、私は事前に辞退していた。
しかし、強く請われて、参加した。
その席でも、美しく輝く純子さんと、そのファミリーが出席されていたが、またまた美形に見とれた。
しかし、ですね、尾上菊五郎さん、ものすごく、短気なお方。
8時からと聞いていた打ち上げ会が、某ホテルで行われたのだが、
7時に、いの一番に駆け付けた菊五郎さん、誰もいないのを見て、怒って帰ってしまった。
それから徐々に人が集まり、7時20分頃には、シャンパングラスにシャンパンを注ぎ、乾杯の用意。
でも、彼はなかなか戻ってこず、我々はグラスを持ったまま、待機。
手に持ったままでは、疲れるな~と、いったんテーブルに置き直していたら、10分~15分後に姿を現した。
彼が退席した後に、一度、家元が挨拶は済ませていたが、彼がお出ましになって、もう一度、挨拶をしかけたら、
純子さんが、「もう、いいわよ」と、にっこり。
あの、短気ご主人のご機嫌をとりつつ、手綱を取るのは、結構大変そう。
その後も、料理が出てくるのが遅い、とか、またまた怒りを買われたようで、場はピリピリした。
しかし、このご一家は、梨園の重厚さ、たるや、ものすごいファミリーだ。
日本の伝統的歌舞伎の世界での大御所中の大御所。人間国宝。
富司純子さんも、ご存じのとおりの芸歴をお持ちの実力者。
そして、日本舞踊の世界は、伝統がある故に、格式が高い(敷居も高い)。
一般の人は、なかなか足を踏み入れることができない。
幼い頃に、日本舞踊を習ったことがある人が、再スタートしてお稽古していることが多い。
叔母もその一人で、幼少時に大阪から先生に来てもらって、日本舞踊を習っていたそうだ。
小さい頃から日本舞踊、となると、なかなか普通の家庭では、馴染みがない。
それなりの背景(芸術的嗜好と経済力)があることが多い。
踊りの発表会も、国立文楽劇場クラスになると、一人分の負担、1回分の費用は、
大阪市内で小ぶりのワンルーム中古マンションが、1戸買えるぐらいは、かかるだろう。
数年に一度、催される会に参加するとなると、
(叔母は、私が知っている限りでは、この文楽劇場だけで、4回)
家が1軒ぐらい、建つのではないだろうか。
趣味を極めるには、資質もさることながら、潤沢な資本が要りそうだ。
招待されて、お付き合いで、渋々ではあったが、日頃、触れることができない世界をちょっと垣間見た。
パーティでは、皆様、留袖でご出席だったのに、私の軽装は、とてもマヌケだったが、まあ、ご愛敬。
でも、いい歳して、ご愛敬は許されない雰囲気をヒシヒシと感じた次第だ。