夜な夜なシネマ

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『名もなきアフリカの地で』

2004年03月22日 | 映画(な行)
『名もなきアフリカの地で』(原題:Nirgendwo in Afrika)
監督:カロリーヌ・リンク
出演:メラーブ・ミニッゼ,ユリアーネ・ケーラー,レア・クルカ,シデーデ・オンユーロ他

昨年度のアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞したドイツの作品。

ユダヤ人のヴァルターとその妻イエッテル、幼い娘レギーナ。
弁護士であるヴァルターは、ナチのユダヤ人迫害から逃れるため、
ひと足先にケニアのロンガイにある農場へ渡る。

1938年4月、やっと家族で暮らせる目処がつき、
ヴァルターは妻子を呼び寄せる。

美しい自然に囲まれたこの地で、レギーナは料理人オウアとすぐに親しくなる。
オウアはレギーナを「小さなメンサブ(奥様)」と呼んで可愛がり、
現地の言葉を教えたり、地元の子どもたちの輪の中にレギーナを誘い入れる。
ドイツでは犬をなでることすらできなったレギーナが
ここではさまざまな動物と触れあうようになる。

それに対し、いつまでもドイツの生活が忘れられない母イエッテル。
彼女は「こんなところでは暮らせない」と叫び、
言葉を教えようとするオウアに「あなたがドイツ語を覚えなさい」と罵る。
レギーナを学校にも通わせられないと、夫への恨みつらみが尽きない。
そんな折、夫からドイツのユダヤ人教会が爆破されたと知らされる。
ユダヤ人は皆遅かれ早かれ収容所送りになる。

夫は言う。「学校に行けないのが何だ。命があることをありがたく思え。
君のオウアに対する態度は、ナチのユダヤ人に対するそれと同じだ」。

第二次大戦が始まり、ドイツ人は敵性人として英国軍に身柄を拘束される。
しばらくして、仕事を持つ男性は拘束を解かれることになり、
ヴァルターは家族とともに新しい農場に移る。
オウアは一家の居場所を探し当て、ふたたび彼らの生活が始まる。

生き抜くために見ず知らずの土地に飛び込んだ夫と
投げ込まれたという思いをなかなか拭えない妻。
そうだからこそ、やがて妻が「人は違いにこそ価値がある」と気づいて語るシーンは
非常にたくましさを感じます。

こんな状況下でも子どものなんと素直なこと。
料理人のオウアとレギーナを見ているだけで温かい気持ちに包まれます。
素晴らしい作品でした。

オウア役のシデーデ・オンユーロは、
スタッフが早くからこの役に推薦しようと決めていたにもかかわらず、
彼の居場所がわからなくて、つかまえるために苦労したそうです。
湖のほとりで彼を発見したとは、まさに映画を地でいくような役者さん。

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