夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『列車に乗った男』

2004年10月26日 | 映画(ら行)
『列車に乗った男』(原題:L'Homme du Train)
監督:パトリス・ルコント
出演:ジャン・ロシュフォール,ジョニー・アリディ他

邦題が「なんとかな女」であるものは、
原題はまったく別であることが多いと書いたことがあります(こちらこちら)。
エロ路線を想像させて販売率or貸出率を上げたいのかもしれませんが、
借りるのを躊躇するようなタイトルとジャケットにするのはやめてほしい。
(「恥ずかしくって借りられない」もご覧ください。)

それに比べて、「なんとかな男」の場合は、
原題もそのままであることが多いんです。
フランスの名匠、パトリス・ルコントのこの作品、
原題は“L'Homme du Train(=列車の男)”。
ちょっとニュアンスを変えたこの邦題は、なかなか作品をうまく表しています。

シーズンオフのリゾート地。
列車を降り立った男がドラッグストアにやってくる。
ぶっきらぼうな様子のその男ミランは、一見して観光客でないことがわかる。
アスピリンを買って、店を出る。

やはり店にいた初老の男はこの街に住むマネスキエ。
狭心症の薬を買いにきたが、在庫切れだと言われる。
ミランとほぼ同時に店を後にする。

マネスキエは、ミランがアスピリンの箱を開き、
「チッ、発泡錠を渡しやがった」と唸るのを聞く。
「水が要るね。うちで飲むかね?」とミランに声をかける。

だだっ広い屋敷に、マネスキエはひとりで暮らす。
久々の話し相手とばかりにミランに語りかけるが、
ミランは寡黙なまま。
アスピリンを飲むと、とっとと出て行ってしまう。

しかし、街の宿はどこも秋季休業中。
仕方なく、ミランはマネスキエの屋敷に舞い戻り、土曜日まで泊めてくれと頼む。
こうして3日間を共にすることとなったふたりの男。

マネスキエは詩をこよなく愛す元教師。
優雅な隠居生活を送っているように見える。
しかし、実際は「バーに姿を現すだけで、女の心を捉える男」になってみたいと願っている。
ミランの外出中に、彼の革ジャンを拝借すると、
鏡の前でワイアット・アープを真似てはおどける。

一方のミランはベテランの銀行強盗。
この街へ来たのもそのためだった。
しかし、マネスキエの暮らしをうらやましく思う。

人生の終わりに差しかかったころに、
こうしてお互いに「なってみたかった男」に出会います。
ラストが現実か夢かと問うなかれ。
シビレます。

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