夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『キッチン・ストーリー』

2004年11月08日 | 映画(か行)
『キッチン・ストーリー』(原題:Salmer fra Kjøkkenet)
監督:ベント・ハーメル
出演:ヨアキム・カルメイヤー,トーマス・ノールストローム他

台所における独身男性の動きの調査。
映画のネタにこんなことを思いつくなんておもろいなぁと思ったら、
1950年に実際にあった調査でした。
スウェーデンの家庭研究所が台所の動線を調査。
それにヒントを得た監督が、対象を独身男性に置き換えて膨らませたフィクション。

ノルウェーの村。
スウェーデンの家庭研究所の調査員たちが
トレーラーを牽引した車で次々と乗り入れる。
独身男性の台所での動きのパターンを調査するためだ。

被験者には観察者が1名ずつ付く。
観察者は被験者の家にトレーラーを横付けし、期間中そこで生活する。
観察者には守秘義務があるが、被験者の台所を自由に出入りできる。
観察者と被験者の会話は一切禁止、家事や雑用を手伝うのもダメ。

調査員のフォルケの担当はイザック。
だが、被験者に応募したことを後悔しているイザックは、
なかなかフォルケを家に入れようとしない。
やがて渋々、調査に同意するのだが……。

優しく、温かく、ふんわり。
何度クスッ、ニタッと笑ったことか。

スウェーデンからノルウェーに渡る国境ではほぼノーチェック。
でも、ノルウェーに入った瞬間に車線を変更しなきゃならんのです。
スウェーデンは左側通行、ノルウェーは右側通行なんですから。
慣れない右側通行で気分が悪くなる調査員もいて、最初からもう可笑しい。

観察者は被験者の台所の片隅に設置された、
テニスのレフェリーが座るような高い席に鎮座。
被験者の動線を図に示すのが仕事なのに、
イザックはフォルケの前ではほとんど動こうとしない。
料理も寝室でしている模様。

のちにふたりが言葉を交わすようになったとき、
フォルケは「なぜ台所で料理しない?」と尋ねます。
イザックの返事は、「スウェーデン人にはわからんよ。
戦争のときにも中立を守って傍観してたような人間の前で
誰が料理なんかできるかね」。
北欧の国ってどこも同じだと思っていた私には目からウロコ。

ボソボソとしたふたりの会話に和みます。
「クマの肉って食ったことあるか?」
「ウマの肉みたいな味らしいな」
「いや、ヘラジカとライチョウを足した味らしいぞ」。
いったいどんな味やねん。

夜中に水道管を握って口を開ければ、歯の詰め物を伝わって外国放送が。
雪の国の寒さも忘れる小粒の絶品。

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