夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ソウル・キッチン』

2011年09月02日 | 映画(さ行)
『ソウル・キッチン』(原題:Soul Kitchen)
監督:ファティ・アキン
出演:アダム・ボウスドウコス,モーリッツ・ブライブトロイ,ビロル・ユーネル,
   アンナ・ベデルケ,フェリーネ・ロッガン,ヴォータン・ヴィルケ・メーリング他

ドイツ/フランス/イタリアの作品。
今年新春に公開されたレンタル新作です。

食べ物が出てくる映画には目がないので、
公開当初「キッチン」と聞いただけでピピッと来ました。
しかし、ソウルは地名のほうだと思い込み、よくよく調べたら魂のほう。
非常に印象に残っている『そして、私たちは愛に帰る』(2007)の監督だと知り、
暗めの作品を想像していたら、実に加減の良い明るさ。

ハンブルクの倉庫然とした大衆食堂“ソウル・キッチン”。
ギリシャ系移民のジノスが若きオーナーで、
そこそこの常連客はいるものの、繁盛からはほど遠い。
滞納中の税金をなんとかしなければ営業を続けられない。

ジャーナリスト志望の恋人ナディーンが上海へ旅立つ前夜、
彼女の親族による高級レストランでの食事会に出席したジノスは、
シェフのシェインが客と喧嘩してクビにされる場面に遭遇。
早速スカウト、シェインは“ソウル・キッチン”のシェフに就任する。

ところが、これまでどおりの冷凍ポテトフライやカツを望む常連客は、
シェインの料理を試しもせずに拒絶。店には閑古鳥が鳴き始める。

ジノスの不幸はこれだけでは終わらない。

まず、服役中だったギャンブル狂の兄イリアスが仮出所してジノスのもとへ。
次に、不動産業に就く学生時代の友人ノイマンが、
よからぬ商売の場所としてジノスの店を入手することを画策。
ノイマンの匿名通報で衛生局が抜き打ち検査に訪れ、キッチンの全面改装を言い渡される。
そして、税務署がやってきて、店になくてはならないステレオを差し押さえ。
とどめに、ひとりでキッチンの物品を移動中、重症の椎間板ヘルニアに。

収拾がつかないこの状態をいったいどう打破するのか。

シェインが高級レストランをクビになったきっかけは、
気取った客が「温かいガスパチョを出せ」と言ったこと。
シェインが「ガスパチョっちゅうのはそもそも冷たいねん」と断ったところ、
「つべこべ言わずに温めろ」と言われてシェインがブチキレ。
これに似た光景は、『マーサの幸せレシピ』(2001)などにもありましたが、
実際にこんな理不尽なことを言う客もいるのでしょうね。

くすりと笑ってしまう話がちりばめられていて、
とにかく、どいつもこいつも憎めません。
美人整体師やインド人による施療シーンは抱腹絶倒もの。
シェインとジノスの調理場シーンはまるで掛け合い漫才です。

クール・アンド・ザ・ギャングやクインシー・ジョーンズなど、
懐かし目の曲がいっぱいのサントラも嬉しくて、
観終われば、なんとなく幸せな気持ちになっている、そんな作品でした。
心もお腹も満たされます。

ここはまさに“ホーム”。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする