『終の信託』
監督:周防正行
出演:草刈民代,役所広司,浅野忠信,細田よしひこ,中村久美,大沢たかお他
TOHOシネマズの無料鑑賞券を友人からもらい、
近所のシネコンでも上映している本作をTOHOシネマズ伊丹まで遠征して鑑賞。
原作である朔立木の同名小説は未読ですが、
同著者の『死亡推定時刻』には思い出があります。
オービスを光らせて免停になったさい、
丸一日かかる免停講習に持参したのがその本でした。
500頁弱のそこそこ分厚い本だったのに、十分すぎる休憩時間中に読了してしまい、
本が手元にないと落ち着かない私は、帰り道に古川橋駅前の本屋へ駆け込んで、
重松清の『小学五年生』を買いました。
と、本作とまったく関係のない思い出ですみません。
封切りから2週間ほど経ち賛否両論、酷評も見かけますけれども、
144分という長さをまったく感じない作品です。
物語は大まかに言って3組の人間関係を描く形で構成されています。
いずれも中心となるのは草刈民代演じるエリート女医、折井綾乃。
女優の髪型で時期のちがいを表しているのは『北のカナリアたち』と同じ。
けれども本作はたかだか数年。20年ではありません。(^^;
天音中央病院の呼吸器内科に勤める折井は、同僚の高井則之と肉体関係にある。
折井は結婚する日を待ち望んでいるが、高井にその気はなし。
そう冷たく言い放たれて、睡眠薬と酒を同時に摂取、自殺未遂騒動となる。
騒動は患者の間でもひそかに噂になっているようだったが、
折井が担当する重度の喘息患者、江木泰三は、
仕事に復帰した折井に対し、騒動に触れるでもなく穏やかに接する。
江木の優しさに救われて落ち着きを見せ始める折井。
やがて死を覚悟した江木は、延命措置は取らないでほしいと折井に頼む。
江木が亡くなって3年が経過。折井は検事の塚原透から呼び出される。
その死について事情聴取したいとのこと。
塚原は事実のみの確認を折井に求め、折井の釈明など聞こうとせず……。
大沢たかお演じる塚原はハラワタが煮えくりかえるほど嫌な奴で、
このやりとりには頭に血がのぼります。
『それでもボクはやってない』(2007)のときと同様、憤りを感じました。
医師に人の死を決める権限などない。それはその通り。
だけど、どれだけ苦しいかは本人にしかわからない。
その本人の思いを本人から直接聞かされた人が存在する。
心情的には私だって折井の気持ちに寄っていますが、
どちらが正しいかなんて言えません。
こんなことを言っている時点でもう逃げているんでしょうね。
救いは、あれだけ嫌な奴だった塚原の、折井を送り出してからの表情。
あそこでニタッと笑われたりしたら、殺意すら感じましたけれど。(^o^;
二度観たい映画ではありません。きっと何度観ても腹が立つ。
でも、説教臭さは感じなかったし、観るべき作品だと思います。
つくづく、問題の投げかけ方が上手い監督だなぁと感心。
ちなみに、生涯に観た映画のうち、好きな作品を何本か挙げるとしたら、
同監督の『シコふんじゃった。』(1991)は確実に入ります。
やっぱり好きな監督です。
「そこに行ってみなければわからないことがある」。心に残りました。
監督:周防正行
出演:草刈民代,役所広司,浅野忠信,細田よしひこ,中村久美,大沢たかお他
TOHOシネマズの無料鑑賞券を友人からもらい、
近所のシネコンでも上映している本作をTOHOシネマズ伊丹まで遠征して鑑賞。
原作である朔立木の同名小説は未読ですが、
同著者の『死亡推定時刻』には思い出があります。
オービスを光らせて免停になったさい、
丸一日かかる免停講習に持参したのがその本でした。
500頁弱のそこそこ分厚い本だったのに、十分すぎる休憩時間中に読了してしまい、
本が手元にないと落ち着かない私は、帰り道に古川橋駅前の本屋へ駆け込んで、
重松清の『小学五年生』を買いました。
と、本作とまったく関係のない思い出ですみません。
封切りから2週間ほど経ち賛否両論、酷評も見かけますけれども、
144分という長さをまったく感じない作品です。
物語は大まかに言って3組の人間関係を描く形で構成されています。
いずれも中心となるのは草刈民代演じるエリート女医、折井綾乃。
女優の髪型で時期のちがいを表しているのは『北のカナリアたち』と同じ。
けれども本作はたかだか数年。20年ではありません。(^^;
天音中央病院の呼吸器内科に勤める折井は、同僚の高井則之と肉体関係にある。
折井は結婚する日を待ち望んでいるが、高井にその気はなし。
そう冷たく言い放たれて、睡眠薬と酒を同時に摂取、自殺未遂騒動となる。
騒動は患者の間でもひそかに噂になっているようだったが、
折井が担当する重度の喘息患者、江木泰三は、
仕事に復帰した折井に対し、騒動に触れるでもなく穏やかに接する。
江木の優しさに救われて落ち着きを見せ始める折井。
やがて死を覚悟した江木は、延命措置は取らないでほしいと折井に頼む。
江木が亡くなって3年が経過。折井は検事の塚原透から呼び出される。
その死について事情聴取したいとのこと。
塚原は事実のみの確認を折井に求め、折井の釈明など聞こうとせず……。
大沢たかお演じる塚原はハラワタが煮えくりかえるほど嫌な奴で、
このやりとりには頭に血がのぼります。
『それでもボクはやってない』(2007)のときと同様、憤りを感じました。
医師に人の死を決める権限などない。それはその通り。
だけど、どれだけ苦しいかは本人にしかわからない。
その本人の思いを本人から直接聞かされた人が存在する。
心情的には私だって折井の気持ちに寄っていますが、
どちらが正しいかなんて言えません。
こんなことを言っている時点でもう逃げているんでしょうね。
救いは、あれだけ嫌な奴だった塚原の、折井を送り出してからの表情。
あそこでニタッと笑われたりしたら、殺意すら感じましたけれど。(^o^;
二度観たい映画ではありません。きっと何度観ても腹が立つ。
でも、説教臭さは感じなかったし、観るべき作品だと思います。
つくづく、問題の投げかけ方が上手い監督だなぁと感心。
ちなみに、生涯に観た映画のうち、好きな作品を何本か挙げるとしたら、
同監督の『シコふんじゃった。』(1991)は確実に入ります。
やっぱり好きな監督です。
「そこに行ってみなければわからないことがある」。心に残りました。