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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『悪の教典』

2012年11月13日 | 映画(あ行)
『悪の教典』
監督:三池崇史
出演:伊藤英明,二階堂ふみ,染谷将太,林遣都,浅香航大,水野絵梨奈,
   滝藤賢一,山田孝之,平岳大,吹越満,小島聖,篠井英介,岩松了他

三池崇史監督の作品は、それがどんな内容であろうと、
「映画を撮るのが楽しくてたまらない」という気持ちが感じられて大好きです。
いつもかなりぶっ飛んでいて、オッサンのダジャレ的なところもあるため、
マジメに観ていると憤る人もいそうです。

原作者の貴志祐介の著作は好きじゃありません。
だけどものすごく面白くて困ります。
『黒い家』、『クリムゾンの迷宮』、『新世界より』、極めつけは『天使の囀り』
どれも異常な世界で、勘弁して~と言いたくなる場面しょっちゅう。

こんなふたりがそろった本作は観逃すわけにはいかず、封切り日に。
原作はまたしても相当に嫌な感じで、どこにもまったく感情移入できず。
これを三池監督がどう映画にするのか、めちゃ楽しみでした。
その結果、笑える作品ではないはずなのに、ウケてしまった私です。

東京都町田市の私立高校。
英語教師の蓮実聖司は、イケメンで教え方も上手く、面倒見も良い人気教師。
生徒たちからはハスミンと呼ばれて慕われ、
校長をはじめとする教師らからの人望も厚い。

しかし彼は実は生まれついての人格障害者。
他人に共感する能力が皆無で、人の気持ちがまったくわからない。
非常に高い知能を持つため、「共感するふり」は朝飯前なのだ。
そんな彼の本性に気づいた周囲の人物は次々と消される運命に。

ざっとあらすじを書こうとしたら、これでおしまいですね。
原作のほうは、彼の淡々とした日常描写から始まり、
彼が人格障害者であることはずいぶん先まで明かされません。
ただ、淡々としすぎているのがとても不気味で、
いったいこのハスミンはどういう人間なの?と不審に思います。

映画のほうでは、冒頭に映し出される蓮実少年のおどろおどろしい姿。
息子が生来の人格障害者であると気づいてしまった両親を殺そうと、階段をのぼります。
これを最初に持ってくれば、そりゃわかりやすいなぁと感心しました。

教師に生徒にその親と、登場人物があまりに多いため、
多少は人数を減らすべく、原作のエピソードが別の人に移行していたり、
その人はそこでは死なないんですけどという人があっけなく殺されたり。
目ざりなカラス殺害のシーンは、原作ではイメージしにくかったのですが、
「ほ~、こんなふうにやっつけちゃうのか」と目が釘付けになりました。

不幸な境遇があったわけではなく、生まれついての悪魔。
伊藤英明は“海猿”シリーズの好青年とは真逆の役を引き受けてよかったんだろうかと、
観る前は訝っていましたが、
共感能力ゼロのハスミンだけに、こちらも共感することはありません。
したがって、嫌なイメージが植え付けられることもなし。

ところで、私が笑いのツボを捉えられてしまったのは、
美術の久米先生がいきなり殺される辺りから。もうアンマリすぎます。
『のぼうの城』のエラそうな態度が鼻についた長束正家役の平岳大は、
あっちでは痛いおしおきは逃れたようですが、こっちでしっかり喰らっちゃって。

主役級の俳優たち、特に吹越満は首を吊らされ、
山田孝之が女子高生のパンティのにおいをかがされた後にズドンって。(T_T)
こういう使い方も三池監督は楽しんでいるでしょうし、
使われるほうもそれをわかっているんでしょうね。

とっても不自然な登場の仕方だった、名前もわからん同僚教師。
「蓮実先生、期待してますよ。期待、してますよ」という台詞も取って付けたよう。
誰よこれ、と思っていたら、原作者の貴志祐介さんだったようで。
目立ちたがりにもほどがあるけど、あんな異常な小説を書く人が見せるお茶目な一面。

原作のオマケだったすんごいダジャレには目が点になりましたが、
映画版にもやっぱりダジャレが盛り込まれていて、
この展開でそんなオヤジギャク?とやはり笑ってしまったのでした。

……だけど続編は要らんやろ。

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