『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』(原題:Poulet aux Prunes)
監督:マルジャン・サトラピ
出演:マチュー・アマルリック,エドゥアール・ベール,マリア・デ・メディロス,
ゴルシフテ・ファラハニ,キアラ・マストロヤンニ,イザベラ・ロッセリーニ他
梅田ガーデンシネマにて。
ここ10年でとても印象に残っているアニメを2本挙げるとしたら、
『ベルヴィル・ランデブー』(2002)と『ペルセポリス』(2007)です。
好きでたまらなかった前者、おもしろくてたまらなかった後者。
その後者のイラン出身女流監督による実写作品です。
テヘランの上流階級家庭に生まれたマルジャン・サトラピ監督は、
進歩的な両親の意向を受け入れて、14歳のときにオーストリアへ。
フランス語を学んで帰国し、イランの大学で美術を学ぶも、
結婚と離婚を経て今度はフランスの美術学校に入学したそうです。
そうこうしているうちにイランの政治情勢は悪化。
故郷では革新的な発言をすれば投獄されかねず、映画はつくれない。
そんな背景があって、イランには戻ることができないまま。
ゆえに本作はイランを舞台にした作品でありながら、
フランス語で制作されたフランス/ドイツ/ベルギー作品です。
キャッチコピーは、「叶わなかった愛が、いちばん美しい」。
1958年のテヘラン。
妻子と暮らす天才バイオリニストのナセル・アリは、
大事にしていたバイオリンを壊されてしまう。
代わりのバイオリンも見つけられず、死ぬことを決意。
あれこれ死に至る方法を考えるも、どれも決定打に欠けるからと、
じたばたせずに自室にこもってじっと死を待つことに。
ナセル・アリが“アズラエル”(=イスラム教の死を司る天使)に引かれるのは8日目。
まず葬儀のシーンを見せられ、1日目に切り替わり、そこから8日目になるまでが描かれます。
ご覧になる予定の方にはこの先ネタバレになりますのでご注意を。
若くして相当に高いバイオリンの演奏技術を持ち合わせていた彼ですが、
師匠からは酷い駄目だしをされ、その意味が理解できません。
ところが、町の骨董屋の娘であるイラーヌに一目惚れをして恋成就、
イラーヌの父親の猛反対により彼女が去ってから異変が起こります。
忘れられないこの恋がバイオリンの音色に込められたとき、彼の演奏は師匠をも唸らすものに。
ナセル・アリ役のマチュー・アマルリックといえば、
『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)が記憶に残っていますが、
『さすらいの女神(ディーバ)たち』(2010)といい、ヒゲがちょっと調子よさそう。
そのせいか、ナセル・アリとイラーヌの恋が激烈とは思えず、
別れのシーンもグッと来なくて。
だけど、何十年も経ってからの再会シーンには胸が詰まりました。
偶然イラーヌを見かけ、嬉々として声をかけるナセル・アリ。
まったく覚えていないと答えたイラーヌは、壁の陰で涙をこらえます。
人は、忘れないように心がけることはできても、意識して忘れることはできません。
みんな、忘れたいのに忘れられない。
叶わなかった恋に苦しむナセル・アリ、忘れたふりをしたイラーヌ、
それに、本当はずっとナセル・アリに片想いしていたのに、
そんな日々を消したかったかのようなナセル・アリの妻ファランギース。
“イラーヌ”はイランを意味すると知れば、
監督の故郷への想いも感じられてじわじわ来ます。
実写とアニメーションを混ぜた絵本のような映像も素敵。
吐息とため息をつかまえることができたら、その音楽は至上のものに。
叶わなかった愛も、こんな形で心に。
監督:マルジャン・サトラピ
出演:マチュー・アマルリック,エドゥアール・ベール,マリア・デ・メディロス,
ゴルシフテ・ファラハニ,キアラ・マストロヤンニ,イザベラ・ロッセリーニ他
梅田ガーデンシネマにて。
ここ10年でとても印象に残っているアニメを2本挙げるとしたら、
『ベルヴィル・ランデブー』(2002)と『ペルセポリス』(2007)です。
好きでたまらなかった前者、おもしろくてたまらなかった後者。
その後者のイラン出身女流監督による実写作品です。
テヘランの上流階級家庭に生まれたマルジャン・サトラピ監督は、
進歩的な両親の意向を受け入れて、14歳のときにオーストリアへ。
フランス語を学んで帰国し、イランの大学で美術を学ぶも、
結婚と離婚を経て今度はフランスの美術学校に入学したそうです。
そうこうしているうちにイランの政治情勢は悪化。
故郷では革新的な発言をすれば投獄されかねず、映画はつくれない。
そんな背景があって、イランには戻ることができないまま。
ゆえに本作はイランを舞台にした作品でありながら、
フランス語で制作されたフランス/ドイツ/ベルギー作品です。
キャッチコピーは、「叶わなかった愛が、いちばん美しい」。
1958年のテヘラン。
妻子と暮らす天才バイオリニストのナセル・アリは、
大事にしていたバイオリンを壊されてしまう。
代わりのバイオリンも見つけられず、死ぬことを決意。
あれこれ死に至る方法を考えるも、どれも決定打に欠けるからと、
じたばたせずに自室にこもってじっと死を待つことに。
ナセル・アリが“アズラエル”(=イスラム教の死を司る天使)に引かれるのは8日目。
まず葬儀のシーンを見せられ、1日目に切り替わり、そこから8日目になるまでが描かれます。
ご覧になる予定の方にはこの先ネタバレになりますのでご注意を。
若くして相当に高いバイオリンの演奏技術を持ち合わせていた彼ですが、
師匠からは酷い駄目だしをされ、その意味が理解できません。
ところが、町の骨董屋の娘であるイラーヌに一目惚れをして恋成就、
イラーヌの父親の猛反対により彼女が去ってから異変が起こります。
忘れられないこの恋がバイオリンの音色に込められたとき、彼の演奏は師匠をも唸らすものに。
ナセル・アリ役のマチュー・アマルリックといえば、
『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)が記憶に残っていますが、
『さすらいの女神(ディーバ)たち』(2010)といい、ヒゲがちょっと調子よさそう。
そのせいか、ナセル・アリとイラーヌの恋が激烈とは思えず、
別れのシーンもグッと来なくて。
だけど、何十年も経ってからの再会シーンには胸が詰まりました。
偶然イラーヌを見かけ、嬉々として声をかけるナセル・アリ。
まったく覚えていないと答えたイラーヌは、壁の陰で涙をこらえます。
人は、忘れないように心がけることはできても、意識して忘れることはできません。
みんな、忘れたいのに忘れられない。
叶わなかった恋に苦しむナセル・アリ、忘れたふりをしたイラーヌ、
それに、本当はずっとナセル・アリに片想いしていたのに、
そんな日々を消したかったかのようなナセル・アリの妻ファランギース。
“イラーヌ”はイランを意味すると知れば、
監督の故郷への想いも感じられてじわじわ来ます。
実写とアニメーションを混ぜた絵本のような映像も素敵。
吐息とため息をつかまえることができたら、その音楽は至上のものに。
叶わなかった愛も、こんな形で心に。