夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』

2017年03月16日 | 映画(あ行)
『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(原題:Demolition)
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:ジェイク・ギレンホール,ナオミ・ワッツ,クリス・クーパー,
   ジュダ・ルイス,C・J・ウィルソン,ヘザー・リンド他

前述の『チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』を観てから、
てくてくとテアトル梅田へ移動。
この日はそんなにキツキツのスケジュールではないのでのんびりと。

テアトルグループのメンバーズカードは2月につくるのがお得です。
年会費1,000円で、招待券1枚と1,000円で観られる割引券がついてくる。
なのに先月うっかり失念。本作を観るときにつくりました。
2月までにつくらないと招待券がついてこないのは残念だけど、
テアトルグループで観る機会があるならば、それでもお得。つくりましょう。

監督は、『ヴィクトリア女王 世紀の愛』(2009)、『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)、
『わたしに会うまでの1600キロ』(2014)などのジャン=マルク・ヴァレ。
私が必ず観てしまうジェイク・ギレンホール主演。共演はナオミ・ワッツ
印象深い役どころでクリス・クーパー。観逃すわけにはいきません。

で、どうです、この邦題。
『素晴らしきかな、人生』のような無神経さに怒りを感じる作品もあれば、
劇中の印象的な一文をこんなふうに邦題とした佳作も。

デイヴィスはあるパーティーで知り合ったジュリアと結婚。
ジュリアの父親フィルは大手金融会社の社長。
そのコネでデイヴィスも同社に就職。何不自由なく暮らしている。

ある日、ジュリアの運転する車で出勤途中、交通事故に遭う。
運転席側から突っ込まれて、ジュリアは死亡。デイヴィスは無傷。
ところが、ちっとも涙が出ない。悲しみすら感じない。
自分は本当に妻を愛していたのだろうか。

病院の自販機でチョコレート菓子を買おうと金を入れるが、袋が出てこない。
病院の職員に声をかけるも「自販機の会社に言ってくれ」。
仕方なく自販機の番号と問い合わせ先を写メするデイヴィス。

帰宅したデイヴィスは、ジュリアが冷蔵庫の水漏れについて話していたのを思い出す。
と同時に、ふとフィルが話していた「心の修理も車の修理と同じだ」という言葉がよぎる。
「まず分解して、隅々まで点検し、組み立て直せ」。
デイヴィスはまずは冷蔵庫を解体、続いて身のまわりのあらゆるものを破壊しはじめる。

一方、自販機への苦情の手紙を受け付けたのが、苦情処理係のカレン。
自販機のことだけでなく、妻を亡くしたことについて書かれた手紙を読んだカレンは、
デイヴィスのことが気になって深夜に電話をかける。

シングルマザーのカレンは、15歳の息子クリスと二人暮らし。
会社の上司カールと交際しているが、カールのことを愛してはいない。
そんな彼女とデイヴィスはしばしば会うようになるのだが……。

上手いです、ジェイク・ギレンホール。
一滴の涙も出ない自分に戸惑う様子が表情だけで伝わってきます。
だけどそれが問題なのかどうかも自分ではわからない。
自宅のみならず会社のものまで次々と破壊し、
義理の両親や社員からおかしくなったと思われても意に介さず。
彼とクリスの訥々としたやりとりがものすごくいい。

この先、ものすごいネタバレです。

終盤、あれこれ破壊中にデイヴィスが見つけるエコー写真。
ジュリアが妊娠していたことを知らなかった彼は、義理の両親に詰め寄ります。
「娘にはほかに男がいて、赤ん坊はあなたの子ではなかったから中絶した」。
だけど、デイヴィスを尾行していたのが事故の加害者であったことから、
ジュリアにはほかに男などいなかったと推測されます。
赤ん坊はまちがいなくデイヴィスとの子どもだったけれど、
ダウン症であることがわかって、ジュリアは中絶したのだと。
終盤にいろいろとあきらかになるこれらのことを察せられないと、
「妻を亡くしてアタマがおかしくなり、やっと正気に戻ったと思ったら、
妻が浮気していたと判明、それでも夫婦間に少しは愛はあった」みたいな、
的の外れた感想になってしまいそうです。
ラストの回転木馬のシーンの意味も理解できない恐れが。

私はもう一度観たいくらい好きでした。この邦題とともに。

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