『さかなのこ』
監督:沖田修一
出演:のん,柳楽優弥,夏帆,磯村勇斗,岡山天音,西村瑞季,宇野祥平,前原滉,鈴木拓,
島崎遥香,賀屋壮也,朝倉あき,長谷川忍,豊原功補,さかなクン,三宅弘城,井川遥他
公開初日がちょうどファーストデー。109シネマズ箕面にて仕事帰りに鑑賞しました。
ご存じ、さかなクンの自伝的エッセイを沖田修一監督が映画化。
さかなクン本人がモデルだと思われる主人公をのんが演じ、さかなクン本人も出演しています。
魚をこよなく愛する小学生・ミー坊(西村瑞季)。
父親・ジロウ(三宅弘城)は魚以外に興味を示さない我が子を心配して叱るが、
母親・ミチコ(井川遥)はそれの何が悪いのかとミー坊を応援しつづける。
高校生になったミー坊(のん)は相変わらずのマイペース。
魚のことをメインに書き綴った新聞が学校でも話題になっている。
その新聞の片隅で不良高校生たちのことも面白おかしく取り上げたものだから、
しかしビビるどころか一緒に釣りを勧められ、総長は拍子抜け。
他校の不良・籾山(岡山天音)たちとの縄張り争いに巻き込まれても、ミー坊はスルー。
そんなミー坊を恫喝すべく籾山が呼んだ「狂犬ヒヨ」の異名を持つ日吉(柳楽優弥)は、
ミー坊の幼なじみだったことがわかって形無し。
やがて高校を卒業したミー坊だったが、常識に欠けることから就職先で何かとやらかし……。
これは決して言ってはいけないことだと思うのですが、
ミー坊役の子役の瑞希ちゃんものんも演技が上手いとは思えません。
なんかわざとらしいなぁと思いながら観ていたけれど、沖田監督作品の中ではそれが嫌じゃない。
高校生にしてはどうにも老けすぎている面々も可笑しい。
うんと若い世代にはウケるかどうかわかりませんが、中年以上の人ならば結構笑えるはず。
この日の劇場内にも笑いがこぼれるシーンがたくさんありました。
ミー坊が通学路で出会うギョギョおじさん(さかなクン)は明らかに怪しい。
ギョギョおじさんから誘われて、家に遊びに行く約束をするミー坊。
家でそのことを話したら、父親は激怒する。
でも母親は違う。人を疑うことよりも信じることを教えたいのだと言う。
人を信じて取り返しのつかないことになってしまうかもしれない今、
父親の怒りはもっともだし、現実的には駄目でしょう。
でもふと、あるインド料理店の話を聞いて悲しくなったことを思い出しました。
そのお店のインド人(ネパール人かも?)店主は、毎日、店の前を行き来する小学生に
「おはよう」「こんにちは」「おかえり」と声をかけていたそうです。
それが保護者から学校に連絡が入った。「子どもが怖がるからやめてほしい」。
店主は子どもたちに挨拶することを禁じられました。なんか切なくないですか。
人を信じることを教え、それが間違いでなかったとわかる世の中であってほしい。
本作に出てくる人はみんな善人。
不良たちもそうだし、学校の先生もそう。彼女を雇うペット店の店主(宇野祥平)も。
善人すぎて嘘くさいぐらいだけど(笑)、こんな人ばかりだといい。
「普通」って何でしょうか。自分の物差しだけで図っちゃいけない。